配膳がエンターテインメントになった

試験的な導入から2年足らずで、「すかいらーくグループではロボットが働いているのが当たり前」というスピード改革が可能になったのは、お客からも好評だったからだ。

「当初、最大のハードルだと考えていたのは、お客さまが受け入れてくれるかどうかでした。従業員が働きやすい環境づくりというのは、こちらの事情でしかないですからね。

ベラボットの導入は、新宿、渋谷、秋葉原といった、デジタルに慣れている若い世代のお客さまの多い都心部から進めました。結果的にはエリアを問わずに好意的に受け止めてもらえました」(花元さん)

試験導入した67店舗で実施した顧客アンケートでは、お客の約9割がベラボット導入に「満足」「大変満足」と好意的な回答を寄せた。コロナ禍の中でしきりに「非接触」が推奨されていたのも、ロボットに抵抗感がなかった一因といえるかもしれない。

ただ、「子供から圧倒的に支持された」(花元さん)というのは、感染うんぬんが理由ではないだろう。

スタッフがせっかく客席まで料理を持って行ったのに、そのまま持ち帰ってきて、わざわざベラボットに乗せて「いってらっしゃい」と送り出す、というようなことも起きているという。ネコ型ロボットによる配膳がエンターテインメントとして受け止められているのだ。

画像提供=すかいらーくグループ
画像提供=すかいらーくグループ
 
さまざまな表情を見せるベラボット。

ロボットが店のアイドルに

擬人化しやすいネコ型にしたのも効果的だった。

ベラボットは、液晶画面の「顔」に、ウインクや居眠り顔、困り顔など数十種類の表情が設定されていて、親しみやすさを演出している。

大阪にある「ガスト西中島店」ではベラボットに「とんかつ」「ぷりん」と名札をつけていて、その様子をTwitterに投稿すると29万もの“いいね”がついたという。

クリスマスには全導入店でベラボットに装飾を施したり、ハロウィーンでは独自に「コスプレ」させている店舗もあるとか。本物のネコが駅長や店長として親しまれる例もあるし、ロボットが店の顔となっても不思議はない。

ベラボットは中国・深圳のPudu Robotics社製だ。同社のウェブサイトには、価格は税抜きで309万円とある。

3カ所につけられたセンサーで、人やモノだけでなく、床に落ちたゴミといった小さい障害物すらも避ける。高性能な音声AIを組み込んであり、日本語、英語、中国語、韓国語、フランス語、スペイン語に対応している。かわいい顔しながら、スゴイロボットなのだ。