これに対して日本の場合には、電力会社やガス会社の足並みがそろわず、まとめ買いがなかなかうまく成立しない。シェールガス革命の成果をわが国が享受できない大きな理由の1つは、この点にあるといえる。
また、日本の電力会社やガス会社がシェールガスの買い付けに関して、総合商社に依存する傾向が強いことも問題である。というのは、わが国の総合商社は総じて、今世紀に入ってからビジネスモデルを改め、コミッション・マーチャントから資源の産地等に対する投資者へと姿を変えつつあるからだ。産地(ガス田)に利権を持つようになった者にとって、天然ガスを安価で売買することは利害に反する側面があるだろう。もちろん、シェールガスの取引にはたす総合商社の役割を否定するつもりはないが、わが国の電力会社やガス会社は直接、産地やLNG輸出基地に出かけ、そこで商社の力も借りてシェールガスを買い付けるべきだろう。この点で、東京ガスが住友商事と協力して今年4月、アメリカ・メリーランド州のコーブポイントLNG基地からシェールガス由来のものを含むLNGを年間230万トン輸入する計画を発表したことは、新しい動きとして注目される。
福島第一原発事故後、再構築を迫られることになったわが国のエネルギー戦略にとって、天然ガスを安価に調達することは決定的に重要な意味を持つ。日本の電力会社やガス会社は、シェールガス革命の本場であるアメリカのガス田やLNG基地に直接出かけ、力を合わせて効果的なまとめ買いを実行し、この国民的課題を達成する先頭に立たなければならない。