韓国が日本より安くLNGを調達できる理由
今度は図2を見ていただきたい。この図は、昨年における日本・韓国・中国のLNG通関輸入価格を月別に示したものである。これを見ると、三国のなかでわが国のLNG輸入価格が割高であり、その差が、東日本大震災後拡大したことがわかる。
東日本大震災にともなう福島第一原発事故の影響を受けて、わが国では原発の運転が次々と停止したため、代替エネルギーであるLNGを緊急に確保するため、日本の電力各社が高値でスポット買いしたという事情は、たしかにあるだろう。しかし図2の背景には、それだけでは説明しきれない構造的な事情が存在する。それは、日本の電力会社やガス会社が、韓国や中国のライバルたちに比べて、LNGを「まとめ買い」する点で立ち遅れており、それが調達価格の差となって表れているという事情である。
先述したサビンパスのLNG基地では、1系列あたり年産375万トンのガス冷却設備を4基建設することになっている。つまり、年間350万~400万トンをまとめ買いすれば、より有利な条件でLNGを購入することができるわけである。現に、インドのGAIL社と韓国のKOGAS社は、年間350万トン購入の長期契約をサビンパスLNG基地とのあいだに締結した。一般的にいって、アメリカからのLNGの輸入については、同国と自由貿易協定(FTA)を結んでいる国に有利で、結んでいない国に不利である。しかし、サビンパスからの輸入に関しては、FTAの有無は無関係とされた。日本と同様にアメリカとの間にFTAを結んでいないインドの会社がサビンパスからのLNG輸入に成功したのは、そのためである。
日本の会社がサビンパスからのLNG輸入に成功しなかった最大の理由は、まとめ買いをする能力に欠ける点にある。この点で注目すべきは、韓国の場合、KOGAS社1社が、電力会社(KEPCO社)や他のガス会社の分まで含めて、必要なLNGをまとめ買いしている点である。