もちろんアメリカのシェールガスを日本に輸入するには、現地で冷却して液化し、LNG専用船で運搬したうえで、わが国に着いたのち再び気化しなければならないため、コストがかかる。したがって、mmBTUあたり2ドルでシェールガスを購入しても、日本ではmmBTUあたり10ドル程度になるといわれている。しかし、たとえ10ドルだとしても、現状の18ドルよりはかなり安い。シェールガス革命を追い風にしてできるだけ安く天然ガスを調達することは、日本のエネルギー政策上の最重要課題だといってもけっして過言ではない。

なぜ、日本の天然ガス調達コストは高いのか。一つの理由は、日本を含む東アジアの場合、ヨーロッパとは異なり、天然ガスのパイプライン網が整備されていないことである。図1でヨーロッパ市場での天然ガス価格がアメリカ市場よりは高く、日本市場より安いのは、アメリカとは違ってシェールガスの本格生産には至っていないこと、日本とは違ってパイプライン網が整備されておりロシア・北アフリカ・北海など複数の供給源から天然ガスを調達できること、によるものである。

しかも、わが国の場合には、他の東アジア諸国よりも深刻な事情がある。例えば韓国では国内の天然ガス・パイプライン網が整備されているが、日本では東海道や山陽道でさえ天然ガスの高圧パイプラインが通じていないのである。域内および国内での立ち遅れを考えると、天然ガス・パイプライン網の整備という点でわが国は、国際水準に比べて、「2周遅れ」の状況にあるといわざるをえない。

日本の天然ガス調達価格が割高なもう一つの理由は、安定供給確保を第一義的に追求し長期契約方式をとったこともあって、LNG価格の原油価格リンク(油価リンク)を外せないことにある。最近では、シェールガス革命の影響で天然ガスの国際価格は低位で推移しているが、原油価格は基本的に高水準を維持したままである。そのため、油価リンクを解除できない限り、わが国の天然ガス調達価格は高くならざるをえないのである。

この点に関連して、韓国や中国も長期契約方式でLNGを輸入しているから、日本だけでなく東アジア諸国の天然ガス調達コストはおしなべて高いということが、しばしば指摘される。この見解は間違ってはいないが、最近では、様相が変わりつつある。