コスプレイベント用のオファーが殺到

依頼があったのは、デジタル系即売会「コスホリック」や、コスプレに関する同人作品の即売会「コスエクスプレス」などのイベントで販売するAV、FC2で配信する同人AVだった。

ツイッターだけでたくさん依頼がきました。いろんな所からオファーがあって、10本以上の月もあった。コスプレ物が中心で全裸にはならない。
出演料は安いと4~5万円で、素人だと相場が分からないみたいで15万円を出す人もいた。同じ人とか、同じ同人サークルから何度もリピートで依頼があって、あと趣味でハメ撮りしたいって人もいた。

趣味でハメ撮りといっても、素人には難しい。撮影をしながら勃起を維持、人に見せるレベルのセックスを展開するのは至難の業である。同人AVでハメ撮りに挑戦する素人男性のほとんどは、途中で中折れとなる。

相手も男優さんじゃないから、撮影しながら挿入はできない。疑似絡みってことが多かった。あとは本番しても発射までいかない。意気込んで撮影しても、途中で心が折れて疑似で終わらせる。
FC2の現場もたくさんありました。元々AVメーカーで働いてフリーになったとか、普通の会社員の人とか、いろいろ。
最初は無修正でもいいかなって出演したけど、何年か前から撮影者が捕まるニュースを頻繁に見るようになってやめた。FC2は1~2年やっただけで、それからは断っています。
だからいま出演しているのは、イベントで売る同人AVとかファンティアとか、コスプレAVばかりです。
写真=iStock.com/visualspace
※写真はイメージです

「子育てしながらできるので、すごくいい」

2019年、平塚里奈は歌舞伎町の店舗型ヘルス嬢と同人AV女優をしていた。

中村淳彦『同人AV女優 貧困女子とアダルト格差』(祥伝社)

歌舞伎町浄化作戦でも摘発されず、生き残った店舗型ヘルスは、男性客が途切れることがない。次々と客をとれる。同人AVもプロダクション時代のように凹むことはなく、ずっと順調に依頼がくる。

出演を繰り返しているうちに同人AV界隈の知り合いもどんどん増え、人が人を紹介してくれる。紹介者はプロダクションのように高額マネジメント料を取るわけでなく、撮影者からもらうお金はそのまま収入となった。

プロダクションを見限ったことで、普通に働けば、収入はコンスタントに月80万円を超えるようになった。通勤時間を減らそうと東新宿の部屋に引っ越した。

そんなときに歌舞伎町で夫にナンパされた。

夫にナンパされて飲みに行って、それから定期的に会うようになりました。付き合うことになって、子どもが出来ちゃいました。
夫と付き合うとは思ってなかったので、AV女優をしているって最初に言った。付き合って半年くらいで同棲することになって、出来ちゃった結婚です。
夫はまあ、優しいっていうのと、仕事を理解してくれるからいいかなって。仕事のことを云々言わない人だったので、それが結婚の決め手でした。

妊娠が分かったとき、結婚しようという話になった。2019年12月、お互いの親のところに挨拶に行って入籍した。妊娠中に、夫は埼玉県の中古マンションを35年ローンで買って、いまはそこで親子3人で暮らしている。

実の両親にも、夫の両親にも、仕事は「派遣で事務をしている」と伝えている。どちらの両親も孫ができるのは大歓迎で、経済的にもそれなりに恵まれている。

親子3人、何も問題のない円満な生活ができているという。

AV新法ができたときも同人AVの仕事は減らなかった。契約書を書くようになったくらい。1日5万円以上稼げる仕事はないので、同人AV女優と撮影会の仕事はずっと続けていくと思う。
人に言えない恥ずかしい仕事だって理解しているけど、子どもを育てながらでもできるので、すごくいい。

平塚里奈に2歳の子どもの写真を見せてもらった。驚くほどかわいい女の子がカメラに向かって笑顔で手を振っていた。

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