「痛み止め」が頭痛の原因に

片頭痛や緊張性頭痛が多いのは確かですが、頭痛には他にもさまざまな種類があります。例えば、恒常的にカフェインを摂っている人がカフェインを摂らなくなったときに起きる「カフェイン離脱頭痛」や、睡眠中に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群による頭痛、精神疾患による頭痛などが挙げられます。これらは適切に診断、治療されることが必要なので、自己流の対処で改善が見られない場合には頭痛外来を受診してください。

鎮痛薬の不適切な使用が、かえって頭痛の原因となるケースもあります。これを「薬剤の使用過多による頭痛」〔薬物乱用頭痛(MOH)〕といいます。MOHについては「薬物乱用」という言葉から違法薬物などをイメージするかもしれませんが、慢性的な一次性頭痛への対処として鎮痛薬を使用すると起こります。

1カ月に15日以上頭痛がある、1カ月に10日以上鎮痛薬を飲んでいる、鎮痛薬が効かなくなったと感じる場合は、MOHの疑いがあります。痛みへの不安から、痛みがないのに予防的に鎮痛薬を飲んでいる方も注意が必要です。

MOHの治療は、原因となる薬剤の使用を中止する「離脱療法」が最も有効です。治療を開始すると、多くの依存症と同様、頭痛の悪化や嘔吐などの離脱症状に苦しむことにもなります。70%がこれを乗り越え原因薬物からの離脱に成功する一方で、予後は30%ほどが再発するといわれています(※2)。したがって、離脱成功後も、医療機関で鎮痛薬の使用状況や経過確認を定期的に行う必要があります。

※2 Kristoffersen and Lundqvist, "Medication-overuse headache: epidemiology, diagnosis and treatment". Therapeutic Advances in Drug Safety. 2014 Apr;5(2):87-99

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人口の1~2%が「薬の飲み過ぎ」で頭痛

諸外国ではMOHの有病率は1~2%とされています。日本では、全国的な統計はないのですが、2022年に国内で初めて報告された調査結果(新潟県糸魚川市)では、MOH有病率が2.32%で、諸外国との大きな開きはありませんでした(※3)

頭痛外来を受診した患者のうち、14.6%がMOHだったとの学会報告もあります。頭痛がありながら受診していない患者が多い現状を鑑みると、実際にはMOHに該当する患者はもっと多い可能性があります。

※3 Katsuki et al, ”Questionnaire-based survey on the prevalence of medication-ovKatsuki et al, ”n Japanese one city-Itoigawa study". Neurological Sciences. 2022 Jun;43(6):3811-3822