頭痛の時にはどう対処すればいいのか。産業医の池井佑丞さんは「慢性的な頭痛の大半は、『片頭痛』と『緊張性頭痛』で、ほかにも痛み止めの飲みすぎで起こる『薬物乱用性頭痛(MOH)』がある。それぞれ、対処法がまったく違うので、まずは自分の頭痛がどれにあてはまるか知ることが重要」という――。
頭痛に思わずこめかみに指をあてる女性
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「命に関わる頭痛」「そうでない頭痛」

日本人の4人に1人が慢性的な頭痛に悩んでいると言われています。産業医としての現場でも、頭痛の訴えは頻繁に聞かれるものの一つです。

頭痛は大きく、「命に関わる病気の症状としての頭痛」と「そうでない頭痛」の2つに分けられます。

命に関わる疾患の症状である可能性がある頭痛は「二次性頭痛」と呼ばれ、脳や頭に原因となる疾患(一例として脳腫瘍やくも膜下出血、脳卒中など)や外傷などがあり、その症状として現れます。今までに経験したことのない頭痛や、発熱、麻痺まひ、意識障害を伴う頭痛の場合には、早急な受診が必要になります。

対して「そうでない」方の慢性的な頭痛は「一次性頭痛」と呼ばれ、頭痛そのものが疾患として捉えられます。命に関わるようなことは基本的にはありませんが、生活の質(QOL)の低下や生産性低下につながります。また、最近では市販薬の不適切な使用による頭痛も注目されています。「薬を飲めば治まる」「何とか我慢できてしまう」と、軽視されがちな一次性頭痛ですが、誤った対処を続けて症状を悪化させている人も多いため、正しい知識と対処を知っておきましょう。

慢性的な頭痛の大半は「片頭痛」と「緊張性頭痛」

片頭痛などのいわゆる「頭痛持ち」の頭痛は、ほとんどが一次性頭痛です。この「片頭痛」と「緊張性頭痛」で一次性頭痛の大部分を占めます。これに有病率は低いですが激烈な痛みを伴う「群発頭痛」を加えて一次性頭痛の代表とされていますが、今回は特に患者数の多い片頭痛と緊張性頭痛に焦点を当てて説明します。

「頭痛持ち=片頭痛」と思っている方も多いですが、実は有病率では緊張性頭痛が上回ります。この2つは、適切な対処法がまったく異なります。それぞれの特徴をご説明しますので、自分の頭痛の種類や対処法を正しく理解しておきましょう。

<痛みの特徴>
片頭痛
拍動性(脈打つような)の痛み
頭の両側が痛む場合もあるが、片側が痛む場合のほうが多い

緊張性頭痛
頭が締め付けられるような痛み(圧迫感)
首筋にかけての痛みや肩こり、目の痛みを伴う場合が多い

片頭痛では吐き気や嘔吐を伴うことがありますが、緊張性頭痛ではほとんどありません。頭痛の発作が出た時に体を動かすことで痛みが強くなったり、光や音に敏感になる場合は片頭痛です。緊張性頭痛の場合はそのような要因で症状が悪化することはありません。