「ミーハーな客」が「モンスター」になる

2021年9月、テレビCMで「濃厚うに包み」と「新物うに 鮨し人流3種盛り」などを盛んに宣伝していたが、実はキャンペーン開始直後にほとんど品切れになってしまっていて多くの客がこれらの商品を食べることはできなかった。その苦情を受けた消費者庁と公正取引委員会によって、スシローには景品表示法に基づく措置命令が下され、メディアも「おとり広告」として厳しく断罪をした……というのは記憶に新しいだろう。

あのキャンペーンはテレビCMで多くの人が目にしていた。それが実は「ウソ」だったということになれば世間の関心はグーンと上がる。同様の体験をした者も続々と名乗り出る。つまり、莫大なカネをかけた広告宣伝が“裏目”となりスシローの悪評を広めてしまったのである。

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そこに加えて、広告宣伝に力を入れる企業が叩かれがちなのは、「ミーハーな客」を爆発的に増やしてしまうことにもある。

テレビCMやネット・SNSのキャンペーンを真に受けて消費行動する「ミーハーな客」というのは、「プッシュ型コミュニケーション」に弱い人だ。よく言えば、ピュア、悪く言えば権威に弱くて、同調圧力に屈しやすい。

実はこういう人たちが企業不祥事では、最も恐ろしい「モンスター」になる。

鵜呑みにしやすいファンが厄介なワケ

広告宣伝を鵜呑みにするということは、メディアが喧伝する悪い話やスキャンダルも鵜呑みにしてしまう。ピュアで権威に弱いので、専門家やインフルエンサーがその企業を痛烈に批判すると「そうだ、そうだ、オレも胡散臭いと思っていた」なんて迎合して、急に手のひら返しでネットリンチに率先して参加したりしてしまうのだ。

そこに加えて厄介なのは、このような「ミーハーな客」が増えれば増えるほど、悪い話が出た時にかばってくれる「熱烈なファン」が離れていくということだ。

このあたりはアーティストやアイドルがまだそれほどメジャーではない時代から、応援をして活動を支えていたという経験のある人ならばわかってもらえるだろう。

そのようなベテランファンからすれば、好きなアーティストやアイドルがテレビに出演してブレイクをすると、苦労が報われたと喜ぶ反面、「にわかファン」が大量に増えてちょっと疎ましいところもある。中には、「もう自分が応援しなくてもいいか」という感じで昔ほどの熱量がなくなって、他のアイドルのファンへと鞍替えしてしまう人もいる。