どうしたら「愛され企業」になれるのか

「なんだか不公平だな」と感じるかもしれないが、そもそも人間社会とはこういうものでないか。例えば、同じようなミスをしても、「愛されキャラ」の人は周囲から「ドンマイ」「しょうがねえなあ」なんて笑って許されたり、サポートをされたりする。しかし、そうではない人の場合は、「チッ」と舌打ちされて誰からもフォローされない、なんてことを皆さんも一度や二度は見たことがあるはずだ。

このあたりは「個人」も「法人」もそれほど変わらない。つまり、職場などで「愛されキャラ」が何かと得をするように、同じような悪い話が出ても「愛され企業」だと何かと得をするものなのだ。

そこで次に気になるのは、どうしたら「愛され企業」になれるのかということだろう。もちろん、企業というものはひとつとして同じものはないので、熱心なファンがたくさんつく理由も経緯もさまざまだ。

ただ、長年、不祥事対応など企業のリスクコミュニケーションに関わってくると、ひとつの傾向があることに気づく。それは端的に言うと、「テレビCMなどの広告宣伝にあまりカネをかけない企業」だ。

「サイゼリヤン」が増えていく好循環

その代表が「サイゼリヤ」だ。ご存じの方も多いだろうが、同社は創業者・正垣泰彦氏の「低価格で提供する」という強烈なポリシーに基づいて広告宣伝費を一切かけない。テレビCMはもちろん、SNSのプロモーションもやっていない。公式Facebookページのみしかない。

サイゼリヤ西早稲田店(2001年4月21日、新宿区西早稲田)
写真=時事通信フォト
サイゼリヤ西早稲田店(2001年4月21日、新宿区西早稲田)

そのように広告や宣伝をしていないのに、なぜサイゼリヤがこんなに有名なのかというと、「クチコミ」だ。家族や友人から勧められて、あるいは誰かのブログやSNS、ニュースによってサイゼリヤの存在を知った人が足を運んで感銘を受けて、「サイゼリヤ、初めて行ったけどおいしかった」とさらに人へと紹介をする。この好循環によって、「サイゼリヤン」と呼ばれる熱烈なファンを多く生み出しているのだ。

だから、サイゼリヤは悪い話がでてもダメージが少ない。熱烈なファンの皆さんがメディアや専門家の批判的な論調を鵜呑みにしないことに加えて、「サイゼリヤン」が「それは個人の問題であって、サイゼリヤ全体の問題ではない」という擁護論をネットやSNSで展開するという「援護射撃」もするからだ。