薄皮シリーズ「5個→4個」の衝撃

各社の「値上げラッシュ」が続く中で、皆さんは不思議に感じないだろうか。

ある企業は値上げをしても「ここまでよく頑張った」「応援します!」なんて感じで好意的に受け取られるのに、ある企業は「終わったな」「大変なのはわかるけれどもう買わないかな」なんて批判的な声が寄せられる。両者の「差」は一体なんなのか。

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写真=iStock.com/filo
※写真はイメージです

最近でわかりやすいのは山崎製パンの人気商品「薄皮つぶあんぱん」などの薄皮シリーズ全7品と、有楽製菓の人気商品「ブラックサンダー」だ。

山崎製パンは昨年12月、度重なる原料高騰が企業努力での吸収が限界にきたとして薄皮シリーズの内容量を変更すると発表した。価格は据え置きだが1袋5個から4個に減ったので、実質的には「値上げ」ということでネットやSNSには批判的な声があふれたのである。

それからほどなくして、「ブラックサンダー」も30円から35円へと値上げが発表された。当然、薄皮シリーズと同じような反応かと思いきや、なぜかこちらの場合、「これまでこの価格でよく頑張った」と「うまい棒」の時のように“美談”として称賛されたのである。

「愛され企業」はファンが援護射撃してくれる

マーケティングや広報の専門家によれば、この差は「消費者が納得できるストーリーの有無」とか「顧客の共感を得られる伝え方だったか」にあるという。ただ、報道対策アドバイザーとして実際に企業のコミュニケーションを手伝ってきた立場で言わせていただくと、そういうテクニック的なところよりも、「愛され企業」であるか否かの方が大きい。

その企業のことが好きで好きでしょうがない、という熱烈なファンが多くいる「愛され企業」の場合、値上げのようなネガティブな話が出ても不祥事を起こしても、よほどトンチンカンな対応をしない限りダメージは少ない。ファンがネットやSNSで「援護射撃」をしてくれるからだ。しかし、そうではない企業の場合、ネガな話が出ても誰も助け舟を出してくれないのである。

それは、先ほどの「薄皮シリーズ」を見ても明らかだ。この商品、確かに個数は減ったが実は1個あたりのクリームやあんの容量は増えており、総重量はそれほど減っていないのである。だが、内容量変更の第一報が出た際にそのような話はほとんど出なかった。これは山崎製パン側の伝え方がうまくないということもあるが、「ファン」が援護射撃をしなかったことも大きいのだ。