それでも日本円は「安全通貨」

【やすお】「円」は安全な通貨だと聞いたことがあります。ただ、国力も衰退しているし、実際はどうなのでしょうか?

【永濱】相対的に安全な通貨と言っていいでしょうね。

為替市場をよく知っている人にとっては常識ですが、一般的に安全通貨と言えば、スイスフランや日本円です。国際金融市場で、金融危機のようなリスクを回避する必要のある事象が起きたときには、駆け込み寺のように、スイスフランや日本円が買われます。

戦争や政変などの有事が起こったときに円を買うことを、「有事の円買い」といいますが、まだ健在といって良いでしょう。

【やすお】そもそもの話ですが、みんな通貨は何をもって「安全」「危険」と判断しているんですか?

【永濱】安全な通貨は「価値が下がりにくいこと」です。逆に、危険な通貨は「何か事象が起きたときに価値が下がりやすい」傾向があります。

【やすお】通貨の価値が下がりやすいか下がりにくいかは、どこで見極められるのでしょうか。

【永濱】これはもう金融市場でお決まりのポイントが3つあります。

「インフレ率」「経常収支」「流動性の高さ」です。

低インフレ率の通貨は価値が下がりにくい

【やすお】まずはインフレ率ですね。

【永濱】その国の物価が上昇すると通貨の価値が下がる、反対に物価が下がると通貨の価値が上がる、このことは、すでに何度か触れてきましたね。

ということは、相対的にインフレ率の低い国の通貨は価値が下がりにくく、安全性が高いといえます。

図表2のグラフは、過去10年間の主要国のインフレ率を比較したものです。とくに、FX取引で注目されるような国をピックアップしたのですが、何かわかりませんか?

【やすお】スイスと日本がダントツに低いですね!

【永濱】はい。安全通貨のツートップですね。低インフレの国なので、通貨の価値が下がりにくいのです。