中国人民元は最弱通貨

【やすお】これを見て、何がわかるんでしょう?

【永濱】まず、今、最も強いのは米ドルであることがわかります。

2016年以降、米ドル以外は0%から下に乖離していますから。

次に強いのがイギリスポンドで、ドルに対して10%割安。1番割安なのが中国、34%割安となります。

【やすお】米ドルの1強状態。自国通貨が弱いのは日本だけではないのか。

【永濱】日本はドル円ばかり見ているので、円安円安と言いますが、実は今は円安というよりもドル高なんです。

アメリカはコロナショックの後に経済対策をやり過ぎたことに加えて、ロシアのウクライナ侵攻もあって、ものすごく経済が過熱しています。猛烈な利上げを行っているのは、その過熱を抑え込むためです。

言い換えると、通貨に上昇圧力がかかりやすい力が働いています。つまり、足元で最強の通貨は米ドルなのは当然なのです。

【やすお】弱いなかでは、中国人民元が最弱……?

【永濱】これは意図的な側面もあるかもしれませんね。中国は変動相場制ではなくて管理フロート制を採用し、ある程度為替をコントロールしてきました。

アメリカからすると「不当に」と枕詞まくらことばがつくのかもしれませんが、人民元を割安にすることで「世界の工場」の地位を維持し、自国経済を支えてきたと言われています。

習近平国家主席
写真=EPA/時事通信フォト
人民元を割安にすることで自国経済を支えてきた(写真は習近平国家主席、2022年11月16日)

中国はまだまだ金融緩和する

【やすお】本当はもっと実力があるのに、不当にハンデをたくさん要求していた、という話がありましたね。あれか。

【永濱】その通り。ただし、今でも人民元が割安なのは変わりませんが、2000年代半ば以降はグラフを見ると徐々にドルとの乖離が縮まっていて、割安感が縮小してきています。

その理由の一つは、中国の経済が成長して国民の生活水準が上がり、物価も上がってきていることがあげられます。

また、米中貿易摩擦が起きて「為替操作国だ」とアメリカが圧力をかけてきたことも、大きく影響しているでしょう。

【やすお】ふぅん。まぁ、不当にハンデがあるのは不公平だし、人民元の価値が上がるのはいい気がするなあ。