「経常黒字通貨」は価値が下がりにくい

【やすお】通貨の安全性を測れる2つ目の要素は「経常収支」ですね。

【永濱】経常収支は、端的に言うと海外との取引の収入と支出を差し引きしたものですね。

海外の支払いよりも海外からの受取りのほうが多いと経常黒字。海外からの受取りよりも海外への支払いが多いと経常赤字です。

【やすお】経常黒字の国と経常赤字の国だと、経常黒字の国の通貨が安全そうですね。

【永濱】その通り。経常黒字の国ほどその国の通貨価値が維持されやすく、価値が下がりにくいでしょう。

なぜなら、経常黒字だと海外に支払うお金よりも海外から受け取るお金のほうが多いからです。

日本で言えば、日本人が海外に支払うお金よりも、海外の人たちから受け取るお金のほうが多いということ。

言い換えれば、海外の人たちが自国通貨を日本円に替えて支払うほうが多くなります。

だから、経常黒字の国の通貨は需要が高まりやすいのです。逆もまた然りですね。

【やすお】そういうことか。

【永濱】主要国の経常収支をGDP比にしたデータを見てください(図表3)。直近の2021年の数字です。

【やすお】これもまた、スイスがダントツで経常黒字ですね。

【永濱】スイスに続いて、ドイツ、ロシア、韓国、南アフリカ、オーストラリア、日本、イタリア、中国、スペインが、経常黒字です。

一方、イギリスやアメリカは経常赤字です。

これを見ると、スイスフランは完全なる安全通貨ということがわかると思います。

「流動性の高い通貨」は安全

【やすお】安全通貨を見極める3つ目のポイントは「流動性の高さ」ですね。

【永濱】これは流動性の高さ、あるいは取引市場規模の大きさと言っても良いでしょう。

インフレ率と経常収支だけ見たらスイスフランが最強なのですが、スイスフランは基軸通貨のドルやユーロ、日本円に比べたら取引量が少ないのです。

取引量が少ない通貨は、値動きが大きくなり、暴落時に売りにくくなるリスクがあります。

【やすお】日本円はどうですか?

【永濱】日本円は、取引の市場規模が大きく流動性が高いので、経常収支はスイスほどではありませんが、安全通貨の部類に入ります。