円安と円高、日本経済にとってはどちらがプラスなのか。第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣さんは「日本の場合、プラザ合意が行われた80年代半ばからアベノミクスが始まる2010年代前半まで、円高が放置されたため、産業の空洞化が起きてしまった。一方、中国は人民元を意図的に安くすることで、経済を成長させた」という――。

※本稿は、永濱利廣『給料が上がらないのは、円安のせいですか?』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

通貨の実力は「購買力」でわかる

【永濱利廣(以下、永濱)】通貨の実力をどう測るのか。それは各国の通貨の「購買力」をチェックするのが一番です。

購買力とは、その通貨を使ってどれぐらいのモノが買えるかということですね。何を見れば購買力の高さを測れるか、覚えていますか?

【やすお】えっ、何だっけ……。

【永濱】答えは「購買力平価」。改めて、購買力平価とは、ある国である値段で買える商品が他国ではいくらで買えるかを示す交換レートでしたね。

通貨の実力を測る場合、各国の通貨が購買力平価に対して何%割高か割安か、どのくらい乖離かいりしているかで、実力がわかります。

【やすお】購買力平価より割高だと、その通貨は「強い」ということですか。

【永濱】そういうことですね。それを算出したのが次のグラフです。IMFの予測データをもとにしました(図表1)。

【永濱】対象にした通貨は、円、米ドル、ユーロ、ポンド、人民元。米ドルは基軸通貨でこれが基準になります。

米ドルに対して上に乖離するほど割高というか、通貨の実力があります。