同じ問題意識を持つ友人と海岸清掃をすることも

イライラを抱えた人間は、人間関係に溶け込めなくなる。同じように環境問題活動をしている友達などはいないのだろうか。

「いますよ。僕は海岸を清掃する活動をしており、イベントなどがあると参加しています。焼け石に水だとは思うのですが。黙々と拾うだけの友人です」

コロナ禍でテイクアウト需要が増え、海岸のゴミは増えたという。

「学生時代の友達もつながっていますが、みんな家族ができたり、育児に追われていたりして、なかなか会えません」

今、興味があることは、大量生産・大量消費について、世の中に疑問を投げかけることだという。

「海岸でゴミを拾う活動をしているうちに知り合った水産加工の会社の人が『魚は獲っても儲からない』という。聞くと、大手の寿司チェーンやスーパーが、原価ギリギリの金額で買い付けに来るからだというんです。昔は仲買人が適正な価格で流通に乗せ、それを個人の魚屋さんが適正な価格で売っていたので、それなりに儲かっていたらしいです」

この問題は、環境問題のみならず、日本の食文化にもつながっていく。

「今は鮭や鱈など特定の魚の切り身だけしか売れない時代。そうなると、食べられるのに規格外だからと捨てられてしまう魚(未利用魚)も廃棄も多くなり、環境負荷も高くなりますよね。あとは、子供たちが切り身しか知らずに成長してしまい、日本の魚食文化が終わってしまう。そういうことを考えると、絶望しか感じなくなり、何とかしようと思うんですが、どうにもならないことが歯がゆくて」

浩平さんには食べさせる子供はいない。

「今度、その水産加工会社の人が未利用魚を送ってくれるそうです。それを子供がいる友人に分けて、日本の漁業の現実を知ってもらいたいと思っているんです。未利用魚の中には、おいしいものもあり、きっとみんな喜ぶと思うんですけれどね」

月収25万円でもクラファン代で生活はカツカツ

浩平さんの月収を聞くと、25万円だという。それほどお金がかからない生活をしているようなので、なぜ貯金がゼロでカツカツの生活をしているのかを聞いた。

沢木文『沼にはまる人々』(ポプラ新書)

「それは、クラファンをいろいろしているからです。環境問題について、さまざまに支援をしています」

「クラファン」(クラウドファンディング)とは、「Crowd(群衆)」と「Funding(資金調達)」を組み合わせた造語だ。多くの人が少額で資金を投資し、財源の提供や協力をする仕組みのことだ。浩平さんが行っているのは、里山保護、農業や漁業の支援などだ。自分に影響力がないからこそ、志ある団体に月3万〜4万円程度のお金を出しているのだという。

農業に支援した場合、収穫体験などの返礼品があるが、交通費も宿泊費も自腹だ。そして、収穫した野菜を抱えて帰宅しても、食べさせる人はいない。環境問題と個人レベルでどう向き合うかは、今後の課題だろう。

人間は自分だけでなく誰かのために活動してしまうところがある。環境問題の場合、それは「地球の未来とそこに住む人のため」や「プラスチックの被害に苦しむ野生動物のため」という「ヒーローになれる」という吸引力がある。それを知っているか、いないかで、向き合い方は大きく変わるのではないか。

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