もし自殺未遂を起こしたら

患者さんがベランダから飛び降りようとしたり、大量に薬を飲もうとしたりしたところを、からくも引き止められたとしましょう。落ち着いたようだし、とりあえずよかったと安心するのはまだ早いかもしれません。

井上智介『どうする? 家族のメンタル不調』(集英社)

自殺未遂を一度でも起こしたら、入院治療を考えるのが原則です。落ち着いているように見えても非常に危険な状態であり、ここで気を抜くと後々悔やむことになる可能性が高いので、入院させる方向に動いてください。

先にも言ったように、入院させるまでは多くの準備や手続きが必要で、時間がかかります。すべては家族が手配しなければなりません。

ただ、自殺未遂にまで症状が進んでいるのであれば、そうも言っていられない状況です。すぐに主治医に連絡しましょう。

夜中であってもすぐ受診を

たとえ夜中であろうと、受診するのをおすすめします。かかりつけ医以外でも構いません。全国の都道府県には「夜間休日精神科救急医療機関案内窓口」が設置されていますから、そちらにご連絡ください。ネットで検索すれば電話番号を確認できます。基本的には深夜でも対応してもらえますが、都道府県によって規定が異なるので、事前に確認しておくことをおすすめします。

電話をかければ、その日の当番になっている病院につないでもらえて、そのまま受診することができます。

すでに自殺未遂を起こしている場合は、いざ病院に向かうときは救急車を呼んでも構いません。あなた1人で自家用車を運転して、患者さんを病院に連れて行くのは危険です。運転中、患者さんが車から飛び出すリスクがあるからです。

どうしても患者さんと2人で行くしかないなら、タクシーを呼んでください。移動中は、患者さんの横に座ってきっちり捕まえておきます。可能なら、後部座席の真ん中に患者さんを座らせ、その両脇に人が乗って患者さんを挟み、3人並んで座るのがベストです。私たち精神科医が患者さんを搬送する場合は、絶対にドア側には座らせません。

自殺の衝動が一度出てしまったら、気を抜くことなく入院まで進めてください。

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