できる範囲で寄り添い、主治医に連絡を

ただ、仕事や家庭の事情によっては、それが難しいときもあるでしょうから、

「いつでも話を聞くからね」

という精神的なつながりを感じられるようにしておく必要があります。こまめに連絡を入れるとか、もし患者さんから連絡があったらすぐに対応できる状況を整えておくなど、できる範囲のことで寄り添ってあげてください。

それから、家にある自殺に使えそうな物は、徹底的に隠すか捨てるかしてください。包丁、カッター、はさみ、カミソリなど刃物類、それからネクタイやリボン、ベルト、ロープといった、細くて長いひも状のものも隠します。ベランダの鍵はしっかりかけて、できれば二重ロックにしておきます。

また、薬の管理を患者さんに任せておくと、一度に大量に飲んでしまう危険があるため、必ずご家族が管理するようにしてください。

もちろん、主治医には必ず伝えてください。次の診察日まで待つか、緊急性がありそうなら電話して事情を話し、診察日を早めてもらって付き添って受診してください。主治医の判断によっては、入院を検討することになるでしょう。

気分転換を促さない

「死にたい」という患者さんに、絶対にやってはいけないことがあります。それは、「気分転換しよう」と促すこと。

「旅行に行って気分を変えよう」
「音楽を聞いてみたらいいんじゃない」
「久しぶりに、実家の親に会いに行ってみる?」

などと、絶対に誘わないでください。

理由は、患者さんの死にたいほどつらい気持ちに、寄り添っていない一言だから。つらさを真剣に受け取ってもらえないという孤独感に襲われます。

悪気があって言っているのではないと、わかってはいるのです。日々、迷惑をかけているにもかかわらず、家族は自分を思って言ってくれている。だからこそ、患者さんは頑張ってしまいます。すでに枯渇しているエネルギーを最後の一滴まで振り絞って、その提案に乗ろうとします。

その結果どうなるかについては考え方がさまざまありますが、せっかく家族が気分転換に誘ってくれたのに、ちっとも楽しめない自分自身に罪悪感を覚える人も多いようです。楽しまなきゃいけないのに楽しめないというプレッシャーが、しんどさに輪をかけてしまうのです。

死にたい気持ちには、正面から向き合ってください。目をそらしたくなる気持ちはわかりますが、死なせないためには直視するしかないのです。「まぁ、別の楽しくなるようなことでも考えようよ」などと話をそらすようなことだけは、絶対に言ったりやったりしてはいけません。