「とにかく食べること」が大切

ひとりでも多くの人が質の高い人生を長く生きられるようにするには、地域の医療者のサポートが欠かせません。プロの視点で患者さんに向き合い、自治体とともにきめ細かなフレイルのスクリーニングシステムを構築していくことが社会的使命だと考えています。

私が勤務している熊本リハビリテーション病院でも、2022年8月より「フレイル健診」というプロジェクトを立ち上げました。いまは65歳と言っても若いので「フレイル対策」と言われてもピンと来ないかもしれませんが、体づくりは一朝一夕にできるものではありません。しかも80歳をすぎると体力はガクンと落ちます。それから筋肉をつけたり体の機能を強化したりするのは至難の業です。

80歳の壁を超えたら、それまで蓄えてきた健康貯金を使って生きていかなければなりません。60代から70代は、健康貯金を増やすことのできる最後の年代です。早めにギアチェンジして、健康貯金をコツコツ積み上げていきましょう。

健康でいるためにいちばん大切なのは食事です。健康に対する意識とともに、食生活もギアチェンジしましょう。基本的には、とにかく食べることです。

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糖質とたんぱく質をしっかり取るべき

年をとると、ほとんどの人は食事の量が減っていきます。店で以前と同じメニューを注文したのに食べ切れず残してしまったという経験はないでしょうか。若い頃より活動量が減ることや、身体的な機能が低下することなどさまざまな理由から、食べる量は減少するのが普通です。このため、いつまでも「太らないように」「これは体に悪いから」など、若い頃の考え方にとらわれているとますます体重が減ってしまいます。

そこで、65歳ぐらいからは好きなものをどんどん食べるようにしてください。ギアチェンジのポイントのひとつは、カロリーをとることです。いままでは「太ってはいけない」と思ってカロリー(エネルギー)制限を気にしていたかもしれませんが、高齢者は食事量が減っていくので、食べたつもりになっても意外に必要なエネルギー量に達していません。

そこで、なんでもいいから食べたいものを食べ、体重を減らさないように注意します。とくに糖質制限をしていた人は食生活のバランスが崩れがちなので、糖質とたんぱく質をしっかりとり、体重を維持または増加させることを優先しましょう。

ファストフードやスナック菓子などは体に悪い代名詞のように言われていますが、適度に脂肪も入っていて少量でカロリーが摂取できるので食べてもかまいません。また、ひとりでいるとつい食事を抜いてしまいがちなので、なるべくほかの人と一緒に食事をする機会をつくりたいものです。

高齢の患者さんを診ていると、ひとり暮らしでも社交的で誰かと食事をする習慣がある人のほうが健康的に長生きする印象があります。