「個人輸入」として米国の関税を回避
当然、シーインもそうした仕組みによって、税金を回避している。
さらに、米国でかかる輸入税についても、シーインは巧妙に回避している。
シーインは、店頭への大口配送でなく、国際郵便(EMS)やFedEx(世界大手の物流企業)などの宅配便を使い、一般消費者に個別配送している。
つまり「消費者が個人輸入する」のと同じである。
ブルームバーグ誌によると、こうした個配には関税がかからないという抜け穴が存在するという。
ちなみに、ZARAは店舗ごとに大口配送をしており、高額な輸入税をかけられている。
だが、シーインは無店舗で、小口配送しているため、無税となっているのだ。
シーインはオンラインによる2C(対個人)ビジネスによって、中国から輸出する時の税、米国に輸入する時の税を逃れ、極めて安価なコスト構造と販管費を実現しているわけだ。
ある米国の学者は、こうしたシーインのコスト負担の少なさには「誰も追いつくことができない」といっている。
低コストと効率的なマーケティングの融合
洗練されたデザインでかつ膨大な品揃えを実現しながら、原材料がタダ同然で、貿易関税が無税という低コスト構造。
インスタなどSNSを利用し、Z世代に爆発的な支持を受けるも、オジさん世代は存在すら知らないという、ターゲティングが明確化された効率的なマーケティング。
これらが巧みに融合している点こそ、シーインの恐るべきところなのだ。
シーインのビジネスモデルをまとめると以下の4点となる。
1.工場で余った余剰在庫や残反を安価で買い取り低価格で世界販売
2.ケイティー・ペリーなど有名なインフルエンサーと組んで、インスタなどSNSを活用したマーケティングと現地PR会社の活用
3.出荷地から車で5時間以内の中国広州工場(世界中の素材、付属が集まる中国の産業集積地)からの出荷による、世界各国の消費者へダイレクト小口配送
4.余剰在庫、中国の輸出関税と米国の輸入税免除を活用した、圧倒的に低コストなサプライチェーン