中国発ブランド「シーイン(SHEIN)」はなぜ大躍進しているのか。経営コンサルタントの河合拓さんは「残反や売れ残りの中から、売れ筋と似た商品を見つけて転売している。ビジネスモデルは古典的な『バッタ屋』に近い」という――。(第2回)

※本稿は、河合拓『知らなきゃいけないアパレルの話』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

世界のZ世代から絶大な支持を得ている「シーイン」
写真=AFP/時事通信フォト
世界のZ世代から絶大な支持を得ている「シーイン」

謎の中国アパレル企業「シーイン」

スタートアップ企業の中でもひときわまばゆい光を放つのが、「シーイン(SHEIN)」という中国企業だ。

1年で売上を倍増させ、2022年には売上高1.5兆円(中国発表)を超えるといわれるアパレル企業だが、多くのビジネスパーソンはまだその名前すら知らないのではないだろうか。

しかし、シーインはそのメーンターゲットである世界のZ世代から絶大な支持を得ている。EC販売ではあのZARAを追い抜くほどの急成長をとげている。それがD2C企業シーインなのである。

破壊的安さを実現するシーインの驚異のサプライチェーンと、恐ろしく効率的なマーケティングが融合したそのビジネスモデルをつまびらかにしよう。

中国の誰もがシーインを知らない

私は自身のネットワークを活用し、中国在住の人々にシーインについて聞いてみた。

すると、中国の誰もが「知らない」と答えた。

実は、この企業は中国では販売していない。

中国企業であることを消したSNS戦略をとり、ステルス・マーケティング(あからさまな宣伝ではないようなマーケティング手法)を行い、中国以外の国のZ世代(1990年代後半〜2000年代に生まれたデジタルネイティブ世代)の定番ブランドとなっている。

彼らは、いずれトータルの売上で世界一になるだろうと世界のビジネススクールの研究者達は言っているようだ。

「大量生産時代」「ファッション高回転時代」だからこそ産み落とされた、シーインのビジネスモデルについて解説していきたい。