作家タイプの監督はみんなが知っている
【監督】(笑)。えっと、まずアニメ監督には、作家タイプとエンターテイナータイプがいると思うんです。作家タイプは、宮崎駿監督、押井守監督、庵野秀明監督、細田守監督、新海誠監督など、強い自分の表現を持っている人たち、自分の色をしっかりと出すことを信条としている人たちです。一般の人が知っているのは、おそらく作家タイプの監督だけでしょう。
【シンジ】みなさん大好きな監督さんです。
【ユーリ】「『君の名は。』ゴッコ」小学生のときよくやったよねー。
【シンジ】……やってねえよ。
【ユーリ】なに恥ずかしがってんの、ウケる。
【監督】(笑)。一方、エンターテイナータイプの監督は自分発のアニメではなく、商業アニメの仕事をしてる場合が多く、そういった作品では強く自分の色を出すのではなく、作品のターゲットに向けて楽しませることを大切にします。なので、その手のタイプの監督は世間ではそんなに有名ではない場合が多い。でも、本人が無名でも作品が有名だったりします。
【ユーリ】え? どういうこと?
作品づくりの目的が違う
【監督】たとえば『ドラえもん』や『ドラゴンボール』『セーラームーン』『プリキュア』『アンパンマン』の監督って誰だか知ってる?
【ユーリ】えー……知らない。
【シンジ】俺も知らない。
【監督】でも、これらのアニメを知らない人っていないでしょ?
【ユーリ】たしかに!
【監督】僕の理想の監督像はまさにそれ! 自分の作ったアニメが誰かの記憶に強く残ってくれるようなことがあれば、とってもうれしい。
僕は最初の頃、自分がどちらのタイプなのか区別がついていなかったのですが、でも経験を積んでいくうちに、また自分の好きな映画を改めて検証してみると、自分の色を出すよりも、お客さんのニーズに応えて喜んでもらうことを得意としていることがわかったんです。
僕の場合は、観てくれる子どもたちが喜んでくれるアニメにしよう、子どもたちがおもしろいと思う表現にしようと、考え抜いた結果、僕はエンターテイナータイプだとわかりました。
【シンジ】作家タイプとエンターテイナータイプは、作品づくりの目的が違うんですね。
【監督】そう。これはどちらが上でどちらが下という話ではなく、それぞれ自分が信じているものがあり、アニメ作りをする目的があるということです。