なぜアニメ作家は絵コンテに命を懸けるのか
【シンジ】実は、実写の自主映画を作ったときに絵コンテを描いたことがあったんです。実写とアニメの絵コンテは全然違うんですね。
【監督】実写ドラマや映画も、撮影用に絵コンテを描くことがありますが、シナリオだけで撮影に入ることもあります。実写の場合はいくらでも余分な映像を撮れるから、100パーセント絵コンテを守って撮影する必要はないのです。
実写はアニメほど映像の完成形に近い絵コンテは作らず、さまざまなカメラアングルから芝居を撮って、編集でどうつなぐのかを決めたりします。
しかし、アニメではこれができない。アニメでは、絵コンテという早い段階ですべて決めてしまうのです。だから、難しい。絵コンテのカットが、そのまま同じ順番で並び、そのまま映像になります。絵コンテが失敗していたら、後から取り返すことができない。だから、アニメの演出家や監督は死ぬ気で絵コンテを考えるんです。
【ユーリ】一発勝負ってこと?
【監督】もちろん微調整をすることはありますが、基本的には絵コンテどおりの映像になります。
重要な回だけ監督自身が描くことがある
Q それで、絵コンテは誰が描くの?
【シンジ】絵コンテって、そんなに大切なものだったんですね。アニメのことが全般的にわかっていないと描けそうにないな。
【ユーリ】今のシンジの実力じゃ無理だね。
【シンジ】いちいちうるさい。
【ユーリ】「今の」って言ったじゃん。含みをもたせてあげたのにー。
【シンジ】そんな重要なものだから、責任者の監督が絵コンテを描くんですね?
【監督】できれば全部自分で絵コンテを描きたい、と思っている監督は多いでしょう。でも、絵コンテを考えるのって、とても大変で時間もかかる。だから現実的には難しいんです。テレビアニメだと、初回や重要な回だけ監督が絵コンテを描く、ということはよくあります。
【ユーリ】それ以外は誰が描くの?
【監督】理想は、各回の演出家自身が描くことです。演出家の仕事は、各話の責任者として、絵コンテに準じて映像を作っていくこと。