「地元を盛り上げる」熱い思いが原動力に

瀬戸内全体を盛り上げようというムーブメントが広がっている、との見方で参加者の多くは一致していた。その中の一人が愛媛出身の税理士、稲見益輔(39)だ。

写真提供=ブラストセトウチ
司会進行中の稲見氏

過去数カ月にわたって裏方として奔走し、ステージ上で司会進行役も務めた。カンファレンス終了後に開かれたアフターパーティーでは、満面の笑みで話に花を咲かせていた。スピード開催のカンファレンスを無事終了させて、ホッとしていたのだろう。

私は稲見に近寄り、「数カ月の準備期間でよくここまでできましたね。秘策はあったんですか?」と聞いてみた。すると次の答えが返ってきた。

「みんな熱い思いを持っていますから……私は背水の陣を敷いて準備に臨みました。何も決まっていない4月の段階でロゴとウェブサイトを先行発注し、失敗が許されない状況に自分自身を追い込んだんです」

何が何でもブラストセトウチを成功させて地元を盛り上げるんだ――こんな気持ちが原動力になったのだろう。

瀬戸内と東京の橋渡し役になる可能性

地域のビジネスコミュティーと言えば、商工会議所などの経済団体を思い浮かべる人が多いのではないか。特徴は大きく二つある。一つは高齢の経営者が中心であるということ、もう一つは都道府県などの行政単位がベースになっているということ。

その意味で、ブラストセトウチは際立っている。坂本や稲見をはじめ活気にあふれた若手が中心であるし、瀬戸内全体を緩やかにつなぐ広域ビジネスコミュニティーであるからだ。

もちろん課題は多い。例えば、日本全体の問題でもあるのだが、ヒトとカネは依然として東京に集中している。地方ではスタートアップに詳しい弁護士や会計士ら専門家がなかなか見つからず、仕方なく東京へ本社を移すスタートアップもある。

しかし、リモートワークで働き方が変わるなど、以前とは状況は変わりつつある。ブラストセトウチは東京にネットワークを持つ起業家や実業家を多数引き寄せているだけに、瀬戸内と東京を結ぶ橋渡し役になるポテンシャルを秘めている。(文中敬称略)

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