「ミニサイズ」を楽しむ人が拡大したワケ

実は近年、エッセルの食べられ方に変化が起きている。

「近年の売り上げ拡大は『エッセルスーパーカップミニ シリーズ』(90ml×6個)のニーズによるものが大きいです。2020年からのコロナ禍で在宅勤務も増え、今まで獲得できていなかった“ビジネスシーンでのおやつ”が増えたと感じています」

画像提供=明治
ミニサイズ(90ml)が6個入った「明治 エッセル スーパーカップミニ 超バニラ」

アイス業界では、1個売り商品を「ノベルティ」、複数の個数が紙箱や袋に入った商品を「マルチパック」と呼ぶ。コロナ禍では、競合メーカーも前者よりも後者の伸びが大きいのだ。

この現象は、コロナ禍でさらに進んだ。リモートワーク、とくに在宅勤務が一般的となり、他社からは「朝の時間帯のアイス購買が増えた」という話も聞いてきた。

職場で同僚と一緒に執務の場合、昼食時間以外には勇気がいるアイスの喫食も、在宅勤務では心理的ハードルが下がる。その際にもマルチパックが選ばれやすいのだろう。メーカーとしての本音も聞いてみた。

「エッセルはもともと200mlで市場定着をしたブランドであり、小容量タイプは200mlの容量を食べられない人=補足的な意味合いとして捉えていました。しかしながら年々成長を続け、今やブランドの成長に欠かせない役割を果たしています。

とはいえ、ブランドの代表格は200mlである点は変わらないので、200mlのカップとともに成長をしていく――というのが理想です」

ロングセラーブランドに起きている「消費者の変化」

1994年に誕生した「エッセルスーパーカップ」は、当時、カップアイス容量150mlが主流だったのを打ち破ろうと200mlにし、量が多くても食べられる味わいを追求した。

その商品哲学は現在も受け継がれており、ブランドとして変えないものは次の3点だ。

(1)「コスパ最強」=(プロダクトに見合った)手軽な価格と満足感
(2)「コクとキレのバランスによる連食性」≒ついつい連続して食べたくなるおいしさ
(3)「レギュラーの容量」=たっぷり200ml

「エッセルは“エクセレント”や“エッセンシャル”から作られた造語ですが、常にみんなの真ん中にある身近なアイス、という意味があります。その点では『期待を裏切らないおいしさ』は欠かすことのできない最重要の要素となります」

画像提供=明治

だが、誕生28年のロングセラーとなると、発売当時35歳だった人も63歳。以前は大好きだった200mlは少しヘビーになったけど、味は好きなので90mlを喫食し続ける。そうした「ブランドから離れたくない」思いもあるのではないか。

「間違いなく、その傾向があると考えています。発売当時のティーン(メインターゲット)は現在45歳前後であり、ブランドの主購買層となっています。一方で発売当時、子供に買い与えていた親世代は現在、シニアとして、マルチパックの主購買層となっています」

一方、SNSでも「久しぶりに食べるとこんなにおいしかった」と気づき、リピート購買につながるシーンがあるという。「離反ユーザーへのアプローチも大切」と、吉岡さんは話す。