定量的に分析をする場合、その結果は誰が見ても同じであり、客観性があります。たとえば、店舗での小売りをやっている会社が、「ネット通販に乗り出すべきか否か」といったテーマで話し合うとしましょう。

「富士経済の発表によると、通販・EC市場の2020年の市場規模見込みは、前年比10.1%増の15兆1127億円です。2022年は16兆4988億円まで拡大すると予測されています。ネット通販は通販市場の8割以上を占めており、カタログ通販は1兆1200億円程度、テレビ通販は6000億円程度で横ばい傾向が続く見通しです」

というのは定量的な「報告」です。市場規模を数字で表現しています。

数字が無ければ議論は終わらない

それに対して、「最近はネット通販が当たり前になっているようです。私の周りでも、欲しいものがあったらとりあえずネット検索をしています。パソコンを使わない人もスマホでショッピングができるし、若者だけでなく団塊世代にもいけるのではないでしょうか」というのは定性的な「意見」です。

話し手の主観や経験をもとに話を組み立てており、数字が一切出てきていません。

定性的な言葉は人によって受け止め方が変わりますが、数字を使っている定量的な説明なら「意図と違って伝わってしまった!」というようなミスコミュニケーションも起こりづらくなります。

会議に数字を持ち出すくらい当たり前のことだ、と感じるかもしれません。ところが、実際の会議では、驚くほどみなさん定性的に発言しているのです。

もちろんすべてを数字で表すことは不可能ですし、不確定要素は必ずあります。定性的な意見がすべて悪いわけではありません。しかし、最初に議論の立脚点とできるような数字がなければ、いつまでたっても議論はばらばらでまとまりません。

数字を使って定量的に考える能力は、すべてのビジネスパーソンに必須のものなのです。

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数字を知らなければ、騙される

ビジネスにおいては、「なんとなくAがいい」「Bがよさそう」という感覚で決めることはできませんし、「えいや!」と勢いで決めては、結果が思わしくなかったときに、その失敗を次に生かすことができません。

数字を使えば、「これは直感ではなく、客観的根拠がある」と主張することができますし、後から検証することもできます。

ところが、数字によって逆に騙されてしまうこともあります。数字を見たときに、直感的に正しいと思ったことと、定量的な事実に差がある場合です。数学で博士号を取得した研究者や大学教授も間違ったとされる、有名な問題を解いてみましょう。

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