……と、ここまでは簡単です。答えは3分の1です。異論ありませんよね。この問題が面白いのはここからです。
あなたが扉を選んだあと、正解を知っている司会者が1つの扉を開けて、それがハズレであるのをバラしてしまいました。つまり、あなたが選んだ扉か、残ったもう1つの扉のどちらかに豪華賞品があることになります。そこで司会者が言います。
「その扉のままでいいですか? それとも変更しますか?」
直感は常に間違える
ほとんどの人は「最初に決めた選択を変えない」と答えます。ハズレの扉が1つわかったから、確率は3分の1から2分の1になった……というのが直感ではないでしょうか。
「よし、自分が選んだ扉が正解だという確率が高まった。このままいこう!」と考えます。でもじつは、扉を変えたほうが、正解の確率が高いんです。
最初にあなたが扉を選んだときは、当たる確率が3分の1でしたよね。ということは、あなたが「選ばなかった扉のグループ」が当たる確率は3分の2です。この確率は変化しません。たとえ、選ばなかった扉のグループのうち1つが開いてしまったとしても。
だから、「選ばなかった扉のグループ」を選びなおすことができるなら、そっちのほうがいいわけです。繰り返しますが、確率は3分の2ですからね。
このように、直感で得た数字が間違っていることは、けっこうあるわけです。
「数字の魔力」を生かしたテクニック
数字が苦手な人は、一歩踏み込んで考えずに、わかりやすい数字に飛びついて判断をしてしまいがちです。そのために、「都合よくつくられた数字」に簡単に納得してしまうといったことが起こります。
ここでは、数字をうまく利用して見せ方を変えることで、消費者に与える印象がどのように変わるのかについて、実際の値付けや売り方を例に考えてみたいと思います。
先日、私の妻が「最近、ジーンズがすごく安く売っているから、2000円か、高くても3000円くらいで買ってくる」と言って出かけました。
ところが、ショッピングから戻ってきた妻が私にうれしそうに見せたジーンズは4990円、当初の予算のおよそ倍のものでした。予算を完全にオーバーして、何がうれしいのか聞くと、「1万円も得した」と言うのです。
値札を見ると、元値が1万5000円。そこに線がひっぱってあって、赤字で4990円と書いてあったのです。私は「見事にアンカリングされているなぁ」と思いました。
「アンカリング」とは、簡単にいうと、最初に提示された情報に意識が行ってしまうことです。アンカリングの「アンカー」とは船の碇を指し、碇をおろすと船は場所を固定されることから、思考がある基準に引きずられてしまうことを指します。