「ABC分析」のむずかしさ

次に、スーパーやコンビニなど小売チェーンも見直しました。小売チェーンは木村屋にとって顧客と位置付けることができますが、一定の販売量と利益を確保することが必要不可欠になります。これを基準にして小売チェーンを絞り込み、半分近くまで削減するに至りました。

雨宮寛二『2020年代の最重要マーケティングトピックを1冊にまとめてみた』(KADOKAWA)

経営学の視点から見ると、木村屋が行った商品アイテムと小売チェーンの絞り込みは、「ABC分析(パレート分析)」に基づくものです。ABC分析はいわゆる重点分析の手法で、多くの指標の中から重視する評価軸を決め、重要度が高い順に優先度を導き出して管理する方法です。その狙いは、事業を効率化して企業や店舗の経営力を高めることにあります。指標としては、売上高や販売個数、コスト、在庫などが想定されます。

ABC分析を実施するうえで難しい点は、パレートの法則に従って、指標ごとに実際の項目を分類していくことです。木村屋のケースでも、顧客別にしても商品別にしても、製品設計から製造、さらには売上が計上されるまでのプロセスを具体的に理解したうえで、共通経費を実質的にどう個別に振り分けるか、その方式を決めるのに困難を極め多大な労力を費やすことになりました。

生産計画を改善し、小売り向け事業で黒字転換

他方で小売チェーンの日々の販売パターンを正確に把握することも、生産計画の改善につながります。たとえば、スーパーのチラシに木村屋の袋パンが掲載されると、通常よりも多くの注文が入ります。これを予測できなければ生産対応できないことになるので、ビジネス機会を逸失することになります。スーパーの販売パターンをしっかりと把握することで、対応の仕方が明確に見えてくるのです。

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こうした見直しを遂行した結果、生産計画も改善され、売上高は一時的に減少したものの程なく回復し、利益についてもスーパー・コンビニ向け事業で数億円あった営業赤字が2年後には黒字に転換しています。また、以前は計画生産の精度が低かったことから残業が多く発生していましたが、こうした固定費が大きく改善したことも収益の改善に寄与したのです。

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