当事者意識をもったリーダーが増えてきた
このキムラヤスタンダードは、手帳サイズの折り畳みのカードにして全社員が携帯できるようになっています。社員には、日々これを携帯し徹底することが求められます。ここまで徹底して社員にキムラヤスタンダードを遵守させるのは、生半可なことでは長年の慣習にとらわれた会社の認識や行動を変えることができないからです。
実際、こうした行動を地道に行っていくことによりリーダーの認識や行動が徐々に変化し、当事者意識が前面に現れたリーダーとしての行動が顕在化するようになりました。
コスト面での改革においては、日配業における生産計画の精度を高めることもまた重要な課題でした。木村屋の事業は、百貨店などで伝統的なあんぱんを中心に販売している「直営事業」と、袋パンを製造・販売している「スーパー・コンビニ向け事業」の2つで構成されており、後者が売上全体の概ね80%を占めています。
2680種類もあるパンを絞り込みへ
事業構成で大きな比率を占めるスーパー・コンビニ向け事業では、前日までに受注した一定のボリュームを翌日の決められた時間までにスーパーやコンビニの店舗に届けなければなりません。そのため、受注から納品までのリードタイムが短く生産計画が極めて立てにくい状況にありました。それゆえ、日配業において生産計画を正確に立てるのは大変難しい作業になっていたのです。
また、袋パン市場では、新規事業者に加えパン専業ではない食品メーカーなども多数参入していることから、顧客がメーカーを認識できないほど多くの類似品が溢れており競争が激しい状況にありました。そのうえ、スーパーやコンビニなど小売サイドの交渉力が強いため、メーカーサイドからの提案が通りにくくなっていたのです。
こうした厳しい外部環境とも相対しながら、精度の高い計画生産に近づけるための改善は進められていきました。
まずは、取り扱う商品アイテムの見直しです。木村屋では約40年間、毎月20種類以上もの新商品を売り出し続けてきたため、ピーク時にはアイテム数が2680に達しました。商品アイテムを絞り込む基準には、利益率に加え木村屋の強みやこだわりに一致するか否かという視点も含まれました。これらの基準から商品アイテムを絞り込んだ結果、約4割を削減するに至ったのです。