経営の「プロ」として
戦うプロたちを束ねていく

戦略的には再び成長を目指さなければいけません。確かに市場は縮小していますが、シェアにこだわってお客様の支持で最高点を頂戴する。2012年は「キリン 麦のごちそう」という新商品を出し、低迷しているビールそのものについても「一番搾り フローズン〈生〉」を発売しました。このような新たな提案をしていくことで市場を築いていきます。

シェアと合わせトップライン(売上高)を上げることが第一ですが、収益も非常に重要です。ただし、単なるコストカットでは能がありません。調達のやり方などを工夫することによって、まだまだコストは下がってくると思います。

それから、広告宣伝費。どのビール会社でも莫大な広告宣伝費を使っていますが、選択と集中でもう少しメリハリのついた投資をすべきだと思います。

アイテムの多さはお客様にとって嬉しいものかもしれませんが、売り場は限られています。新商品もなかなか根づきづらい状況を考えると、やはり主力ブランドにきちんと投資をしていかなければなりません。時間はかかりますがブランド力が高まれば、PB商品や低価格商品への一つの対抗策にもなってきます。

そして戦う姿勢を社員と共有し、キリンビールを「戦う集団」にするために徹底的に社員と対話をし、自分で考えて決定し、実行できる風土をつくります。命令されて動いているうちは組織能力が高まりません。

具体的な方法としては権限委譲。権限を若い人に渡していくと組織は変わります。そのほうが社員も楽しいでしょう。私自身、そういう生き方をしてきました。世の中には「指示されたほうが楽」という人もいますが、こういう人はリーダーになってはいけない。

権限を委譲しても全部成功するとは限らず、失敗することもあるでしょう。しかし見逃せる失敗だってあるわけで、そこに人を育てるコツがあります。

リーダーの育成はトップの使命であり、私の最優先課題は人づくりと考えています。社内には製造、物流、マーケティング等のプロが揃っています。そこへ10年ぶりにやってきた人間ができることは、「経営」です。経営のプロとして人材を育成し、収益を高める。それが私に課せられたミッションだと考えています。

※すべて雑誌掲載当時

(宮内 健=構成 的野弘路=撮影)