貨物輸送を担う線区は存廃議論の対象外に

検討会のとりまとめ案は、JRが単独では維持が困難になるとする「輸送密度2000人未満の線区」について、沿線自治体が中心となって法定協議会等を設け、将来に向けた地域モビリティのあり方を検討するという基本方針を示した。

また多くの自治体にまたがるなど広域的な調整が必要な「輸送密度が1000人未満、かつピーク時の1時間当たり輸送人員500人未満」の線区については、国が「特定線区再構築協議会(仮称)」を設置し、「廃止ありき、存続ありきという前提を置かず」に協議する仕組みを提案した。

ただ1000人/日未満の線区が一律に検討の俎上そじょうにのぼるわけではない。利用者数では計れない社会的便益を持つ線区、具体的には「わが国全体の経済成長や地球環境問題への対応、災害対応や安全保障等の観点から重要な役割」として、

・拠点都市間を連絡する特急列車等が設定されており、相当程度の利用がある線区
・全国一元的な貨物鉄道輸送サービスを構成する線区
・災害時や有事において貨物列車が走行する蓋然がいぜん性が高い線区

などに該当する線区は鉄道として維持する必要性があり、協議の対象から除外するとしている。例えば輸送密度1000人/日未満の線区では羽越本線(酒田―羽後本荘間)、津軽線(青森―中小国間)などがこれに該当する。

「営業係数150未満」を実現しているローカル私鉄も

協議会は「鉄道を運行する公共政策的意義が認められる線区」か「BRT(バス高速輸送システム)やバス等によって公共政策的意義が実現できる線区」かを評価し、鉄道を存続させる場合は運賃の適性化や上下分離などの公的支援を行いつつ、必要な投資を行って競争力を回復させるとした。

鉄道として存続する場合は利用促進とともに運行コストの削減が必須となる。かつて特定地方交通線は輸送密度4000人/日未満の路線は「バスのほうが効率的」としたが、今回のJR西日本、東日本の公表が2000人/日未満としたように、その後、省力化、省メンテ化が進んだことで損益分岐点は下がっているはずだ。

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事実、ローカル私鉄には輸送密度2000人/日未満でも営業係数150未満の路線が存在する。無線式の信号システム導入や、ハイブリッド車両や燃料電池車両の導入による架線の撤去など運行コストを下げる技術の研究も進んでいる。かといって不採算路線の合理化のため事業者に多額の設備投資を求めることは困難だ。こうした投資にこそ国や自治体の手厚い補助が求められるだろう。

BRT・バスへの転換については、鉄道事業者の関与(直営またはそれに準じる運行)の下、鉄道と同等の運賃水準、通し運賃を設定するとともに、時刻表等に鉄道路線に準じる形で掲載される「特定BRT」制度を新設し、鉄道と同等かそれ以上の利便性を確保するとした。実例としてはBRTに転換した気仙沼線は、一部区間の運行本数が鉄道時代の3倍になっている。