最強の雑談王といえば……?

これまでお会いした人の中で、「最強の雑談王」といえば、アメリカのコミュニケーション教育のカリスマ、デール・カーネギーの本が愛読書だという、カリスマホストのROLANDさんです。

彼が主演するネット配信番組で、「コミュニケーション」がテーマの回にゲストとして呼んでいただきました。まず会った瞬間に、深々とお辞儀する礼儀正しさにびっくり。さらに、「情熱が大切」「人と会うときには、いつもの1.5倍嬉しい表情を見せろ」「人に興味を持って、質問せよ」「一方通行にならず、ラリーが大切」「隙を見せろ」などなど、コミュニケーションの本質をとらえた言葉やインパクトのあるたとえを、これでもかと繰り出しました。

その洞察力にノックアウトされたのですが、とくに印象に残ったのが、高い雑談力です。

私も、テレビ番組などに出させていただくことがありますが、カメラの外では案外、無口な司会者やタレントも少なくありません。

しかし、ROLANDさんは、番組が始まる前も、司会者の女性と、「僕が嫌いなのはね、パクチーと柚子と辛いものと……」とぺちゃくちゃと話が止まらない様子。「おしゃべりが好きすぎる」とおっしゃっていました。

基本、「人が好き」。究極のナルシシストのように見えますが、自分をしっかり愛したうえで、さらに「あふれ出る愛」を周囲の人にどんどんと、お裾分けしているような感じです。

圧倒的なエネルギーを持ち、相手を照らし、元気にし、いい気分にする。そんなパワーとオーラにすっかり魅了されてしまいました。

絶対、選挙に勝てる話し方とは

「話し方の家庭教師」である私の生徒さんの中には、みなさんがよくご存じの政治家もいます。これまで、大勢の政治家の遊説の「追っかけ」をし、彼らの話し方をウォッチするなかで、「選挙に勝てる話し方」というのがあるのが、だんだんとわかってきました。

「政治家が有権者から信頼されるために一番必要なのは何か?」と問われたら、みなさんは「実績」「品格」「人柄」などとおっしゃるかもしれません。

もちろん、それも大事ですが、じつは「この政治家は自分のことを理解し、自分の声に耳を傾け、わかってくれている」という有権者の感覚こそが決め手なのです。政治心理学が専門の米エモリー大学のドリュー・ウェステン教授いわく、アメリカの有権者は、次の2点で、候補者に投票するかどうかを判断しているのだそうです。

① この候補者、政党は私と同じ価値観を共有しているのかどうか?
② 私のような人を理解し、気にかけているのかどうか?

まさに、トランプ氏が大統領になれたのも、支持者の考え方に憑依し、

「僕は君たちの気持ちをわかっているよ」
「君たちの仲間は僕だけだ」

岡本純子『世界最高の雑談力』(東洋経済新報社)

とささやきつづけ、彼らが聞きたい話を滔々と繰り出したから。小難しい話を上から目線で繰り広げるのではなく、同じ目線に立ち、受け取りやすい球を投げてくれる人。

「私の話をよく聞き、私の気持ちをわかってくれる」
「この人は私と同じ価値観だ」
「親しみやすい」

そう思わせてくれる人に、人は否が応でも惹かれてしまうのです。

岸田文雄首相の「話を聞きますアピール」の真意はそんなところにあるのかもしれません。

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