安倍晋三元首相の突然の死について、世界中が追悼の意を示している。とりわけアメリカのトランプ元大統領のメッセージは話題を集めた。なぜ2人の関係はここまで深いものになったのか。安倍元首相の取材を重ねてきたライターの梶原麻衣子さんが振り返る――。
2019年5月26日、ゴルフ場で笑顔を見せる安倍晋三元首相(右)とトランプ前米大統領(千葉県)
写真=AFP/時事通信フォト
2019年5月26日、ゴルフ場で笑顔を見せる安倍晋三元首相(右)とトランプ前米大統領(千葉県)

世界中の国々が外交儀礼を超えて追悼している

安倍元首相の衝撃的な最期に、国内だけでなく各国からも驚きの声が伝わるとともに、その死を悼む各国政府や首脳からのメッセージが寄せられている。同盟国のアメリカだけでなく、中国や韓国など、外交的に対立する場面もあった国々も、だ。

中でも、ウクライナ侵攻中で日本の対ロ姿勢を強硬に批判していたプーチン大統領の対応は素早かった。安倍元首相の死に対しては、「晋三」とファーストネームで呼んだ弔電のほか、母の洋子さんや妻の昭恵さん宛にも「息子であり、夫である安倍晋三氏のご逝去にお悔やみを申し上げます」とする弔電を送ったと報じられている。

外交儀礼上、功績をたたえるのは当然であるとはいえ、ここまで安倍元首相の外交姿勢や国家間の友好に対する貢献を評価する声が寄せられているのは驚くべきことだ。しかも多くの国が「喪に服す」として半旗を掲げたり、自国の政治的モニュメントに追悼のライトアップを行ったりしているのは、前代未聞のことと言える。

もちろん、首相の職を退いているとはいえ、現職の国会議員の「暗殺」だ。しかも、長期政権となったことで、短期の政権では回り切れない国々も多数訪問している。安倍政権期の外交姿勢は「地球儀を俯瞰する外交」と呼ばれ、訪問国・地域は実に80にも上る。

だが、弔意の表明が相次いでいる理由は、これだけではなさそうだ。

「外交の安倍」とも言われた安倍元首相は、在任中の外交の場面でどんなことを考えていたのか。何に気を払っていたのか。筆者が取材と構成を担当した首相退任後の雑誌『プレジデント』掲載の安倍元首相へのインタビュー記事(2021年7月16日号、同10月15日号)を中心に、その一端を解き明かしてみたい。