なぜ周囲は「安倍総理」を熱烈に応援していたのか
国内的には第1次政権の挫折を経験し、「政治家としての自身や誇りも砕け散った」と述べていた安倍元首相。多くの仲間に支えられたからこそ、もう一度カムバックすることができた、と述べている。
「私が彼ら(官邸スタッフや秘書官)を心から信頼したからこそ、彼らも私を支えてくれたのでしょう」
「どうして皆さんがそこまで熱心に総理を熱烈に応援し、支持してくれるのか、ご本人としてはどうお考えですか」と少々失礼な質問もぶつけたが、嫌な顔をするどころか柔らかい表情で、こう答えている。取材時の肉声に近い形で再現してみたい。
「……私が『足りない』からでしょうね。それを補ってくれる優秀な人たちが仲間になって、助けてくれる。安倍さんを支えなきゃ、補ってあげなきゃ、と思ってくれるんでしょう(笑)」
総理の職から降りた後ではあるが、自分の弱さに自ら言及した安倍元首相の言葉に、すっかり驚いてしまった。
選挙中は「安倍晋三です、お願いします」を300件以上やる
最後に、妻・昭恵さんから聞いた話を再度ご紹介したい。筆者が「選挙中って、政治家の方はやっぱりアドレナリンが出るものなんでしょうね」と尋ねたところ、選挙中の夫の様子についてこう述べていた。
「それはもう、猛烈ですよ。街頭演説や選挙区回りの合間の移動の最中も、途切れることなく電話をかけ続けるんです。『安倍晋三です、誰々さんをお願いします』。で、即、次の人に電話。『安倍晋三です、お願いします』……これを200件も300件もやるんです、嫌な顔一つせずに」
総理まで務めても、そんな地道な選挙運動をするのかと驚いたが、確かに総理からの電話があれば、集票にはこれ以上ない強力な後押しになる。外交の場面では相手への「理解」や「気持ちのふれあい」を重視していた安倍元首相だが、選挙の場面ではこれ以上ない闘争心を燃やしていたに違いない。
政治家として、「戦う姿勢を忘れてはいけない」と述べ、若手にも「もっと戦え」とハッパをかけていた安倍元首相。選挙という戦いのさなか、凶弾に倒れられたことが無念でならない。