プーチンの目論見は完全に裏目に出た
【池上】お隣のスウェーデンは、2010年に廃止した徴兵制を、2018年に復活させました。志願兵の減少と、ロシアの脅威が高まったことが理由です。同じ年には、有事に対する備えを呼びかけるパンフレットを作って、国内の全470万世帯に配布しました。食料と水の備蓄や、冷戦時代に作った防空壕の再整備を求めたんです。
【増田】スウェーデンはロシアと国境を接していませんが、バルト海を挟んでロシアの飛び地の領土カリーニングラードと向かい合っています。ここにはバルチック艦隊の母港がありますし、短距離弾道ミサイル「イスカンデル」が配備されています。
【池上】ロシアのウクライナ侵攻は、あえてNATOと距離を置いて、ロシアを刺激しないようにしてきたフィンランドとスウェーデンに加盟を促す結果となりました。
ロシアは、もしも両国のNATO加盟が実現したら、カリーニングラードの「イスカンダル」に核弾頭を配備すると警告していました。しかし、フィンランドとスウェーデンがNATO加盟手続きに入ることが決まると、プーチン大統領は「スウェーデンとフィンランドに関してはウクライナとの間でわれわれが抱えているような問題はない。NATOに加盟したいならそうすればいい」「NATOの部隊と軍事インフラが配備されれば、相応の対応を取り、われわれへの脅威がもたらされた地域に対して同様の脅威を与えざるを得ない」と語りました(ロイター・6月30日)。
フィンランドやスウェーデンはロシアを刺激するような行動は取らないでしょう。ただし、NATOの東方拡大を阻止することが戦争の大義名分でしたから、プーチン大統領のもくろみは完全に裏目に出た形です。