冷戦が終わっても、軍備を増強してきた

【増田】ソ連との間にそうした歴史的経緯があるので、東西冷戦で核開発競争が盛んになると、フィンランドは核シェルターを必要としたわけです。冷戦が終わってソ連がロシアに変わっても、フィンランドは軍事的な中立を保ちつつ、軍備には一貫して力を入れてきました。

【池上】防衛費はGDPのおよそ2%ですから、NATO加盟国の多くより高い水準です。兵力は28万人で予備役が87万人。男性には徴兵制度がありますね。

【増田】18歳から60歳の男性が対象です。半年から1年の兵役に就き、終えたあとは予備役となります。毎年、2万人以上の若者が徴兵されるそうです。女性は志願制です。

私が現地でいつも通訳をお願いしているのは、フィンランド人と結婚している日本人の女性なんです。

最初にお会いしたときは息子さんが10歳くらいで、

「うちの子も、10年もしないうちに軍隊に行くんです。日本人としては、いくばくかのためらいもあるんですよ」

と心配していました。成長して、実際に兵役に行ってみると、

「面白いのよ。いまの子たちは自分で何もできないから、ベットメイキングでシーツをピシッとするところから教わるみたい」

と笑っていました。

学校へ取材に行って、愛国心をどう教えているかと尋ねたら「日本人からは、必ずその質問が出る」と言われました。愛国心は教えるものではなく、国を大事に思うのは当たり前だという考えなんです。自分の国が独立して他国の支配を受けず、自分たちの言葉を話して国のあり方を決める。それをずっと守ってきたのだから、これからも守ろうと思うのは当然だということですね。

【池上】日本で愛国心と言うと、韓国や中国を見下すような感情とセットになりがちです。それぞれの国の人が自分の国を愛する気持ちを尊重するのが、本当の愛国心ですね。

軍事演習中のフィンランド空軍マクドネル・ダグラスFA-18ホーネット戦闘機
写真=iStock.com/VanderWolf-Images
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