人事部がDX音痴…DX人材の採用が難しいワケ
では、どうやって採用しているのか。同社は職種別採用を実施しているが、DX人材の定義が難しいことからあえて募集職種を設けていない。基本的には同社のインターンシップ応募者やエントリーシート提出者から選考しているという。
「募集職種には技術、営業など幅広いが、こうした職種に応募してくる多数の学生の専攻や学科を見ながら人事部内で『この学生はDX人材じゃないか』と思われる学生をピックアップしている。もちろん工学部など学部だけではわからないので、どんな勉強をしてきたかをチェックする。専攻・学科でいえば情報工学系の学生、情報系の学科でもAIを学んだ人、工学系でロボット工学などを学んできた人を中心に探す」(人事部長)
ただ人事部員もデジタルに関しては素人だ。応募書類などを見てすり合わせる。
「たとえばAIを使ってグラフィック機能や映像を勉強した人を見つけると『彼はDX人材じゃないか』と言ってくる部員もいる。皆で話し合って『ちょっと違うんじゃないか』と思う人は外したりする。実際に見分けるのは難しいが、ある程度、DX人材らしい人を見つけると、学生と個別に接触し、デジタルに詳しい専門の担当者と会わせてインタビューしながら掘り下げていく。そうしないと本人が学んできたこともよくわからないし、その力を活かして当社で活躍してくれるかを見極めるようにしている」(人事部長)
専門の担当者がDXの素養があると見なした学生は独自にアプローチする。
「専門の担当者と人事部が有望だと思う学生には、この職種に応募しませんかと口説く。『応募してもらえれば内定を出します』と約束し、グリップしながら選考を進めている」
DX人材に関しては会社からのスカウトが中心になる。ただ人事部長は「学生が大学で何を学んできたかを細かくチェックすることはこれまでほとんどなかった。多めに採る企業は実際に使えない学生が混じっていても歩留まりの点で大丈夫だろうが、少人数しか採らない場合、未知の職種ほど丁寧に見ていかないといけないし、難しい時代になった」と実感する。
同社のような取り組みは他の企業でも水面下で行われている可能性もある。あるいは同社は応募学生から見つけていく方式だが、大量に採用する企業は、リクルーターを使って学部や研究室に出向いて積極的にアプローチしている企業もあるだろう。
また、ヤフージャパンは新卒の能力のあると認めた人材には年収650万円超と一般職の年収(400万~500万円)より高い賃金で採用するところもある(前出・日経)。
DX人材といっても各社によって定義や要件も異なるだろうが、今後、少なくともデジタルスキルの素養を身につけた学生は、学歴など大学の偏差値を超えて人気が高まる可能性がある。