世界トップのクラウドサービスを持つアマゾンは

次にアマゾンについてである。アマゾンは、いうまでもなく電子商取引の世界的プラットフォーマーで、その収益は顧客の購買データを活用するビジネスモデルから生み出される。さらに最近ではAmazon Web Services(AWS)というクラウドサービス提供の分野でも世界でトップとなっている。日本の金融に関しては、2014年2月、レコメンド型の融資サービスである「アマゾンレンディング」を開始した。

従来型の銀行融資と異なり、書類を提出する必要がない、オンラインレンディングの先駆けとなるサービスだった。融資の対象はアマゾンマーケットプレイスの出店者である法人で、事前にアマゾンから条件提示がされた先である。金利は8.9%~13.9%と高めで、また初回こそ申し込みから5日かかるが、2回目以降は3日程度で融資が実行されるというスピードが特徴である。

しかしながら、2018年頃から今まで案内のあった事業者に案内がなくなったとの情報もあり、縮小ないし撤退した模様である。アマゾンが事業者に資金を提供するのは、あくまでアマゾンマーケットプレイスのビジネスを拡大してもらうためであるが、その点で大きなメリットがなかったということが推測される。

日本の金融業界にとって大変な脅威になりうる

フェイスブックは世界的なSNSで、インスタグラムも買収してその傘下に入れたプラットフォーマーである。利用者のデータを元にした広告基盤の提供によって事業者から収益を得ている。

遠藤正之『金融DX、銀行は生き残れるのか』(光文社新書)

さらに利用者の利便性を上げていくことを目指して、金融事業に関しては2019年6月に価格変動がない仮想通貨であるステーブルコインのリブラ(Libra)の計画を発表したのが記憶に新しい。複数通貨のバスケット制が特徴だった。その後、世界の金融当局の反発にあって計画は変更を余儀なくされ、2020年には名称もデイエム(Diem)と変更され、既存の通貨(例えばUSドル)を裏付け資産とするステーブルコインへと計画を変更した。

しかしながら、リブラ(Libra)での印象から当局の警戒感も強く、USドル建てのステーブルコインは複数流通しており、新たな付加価値を付けて発行する道は遠い印象であった。結局2022年1月31日に、ステーブルコインの事業の継続を断念することになった。なお、フェイスブックは2021年10月28日に、社名をメタ(Meta)に変更した。

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ここまで、世界的プラットフォーマーの日本の金融分野への進出状況を概観したが、これを表にまとめた(図表3)。

筆者作成

彼らはすでに収益モデルを確立しているので、仮に金融に参入した場合、金融単体での利益を度外視することができる。よって大変な脅威になりうる存在であり、今後も目を離すことはできない。

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