母親が介護うつに

やがて、75歳になった父親の徘徊はいかいが始まった。朝4時ごろ、電動機付き自転車に乗り、勤務シフトが入っていなくても出かける。それだけでなく、一度仕事に行き、帰ってきたのにまた出勤しようとすることも増えた。

逆に、朝仕事に行ったと思ったら、職場からは「来ていない」と連絡が入ることもあったが、その場合はどこに行っていたのか、増井さんたちは検討もつかず、途方に暮れるしかなかった。

そんな中、71歳の母親は気分が沈みがちになり、食欲が落ち、どんどん痩せていった。かかりつけ医に相談すると、「介護うつではないか」ということで、抗うつ剤を処方。それでも母親は痩せ続けていった。

「このままでは母のほうが先に死んでしまうのではないか?」と心配になった増井さんは、遅ればせながら父親のことに関して地域包括センターに相談。すると、「とにかく認知症診断を受けて、介護認定をとってきてください。そうすれば道は開けます。まずはそこからです」と助言を受ける。

増井さんは、「何とかして父に認知症検査を受けさせなければ……」と強く決意した。

(以下、後編へ)

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