【本郷】また歴史的な出来事を時間軸に沿って並べるだけなら、誰にでもできます。そう考えると経験を抽象化し、法則性を見つけ出す――つまり歴史的な事実をどう類型化し、パターン化ができるかが歴史学者の腕の見せ所なんですよ。その点でも、深井さんの取り組みは本当の意味での歴史と言えるのです。

【深井】それは、ぼくが大学で社会学を学び、IT企業で働いた影響があるのかもしれません。ベンチャーとかスタートアップ界隈では30年くらい生きただけの若者が、30年の経験をもとに事業を興そうとアイディアを出し合うでしょう。でも、もっと効率的な方法があるのではないかというもどかしさがありました。

撮影=遠藤素子
歴史思考』(ダイヤモンド社)の著者・深井龍之介さん

世の中には、世界中の歴史学者の先生たちが整理してくれた史実が存在する。なにかに取り組もうとしたときに、3000年の人類の営みが役に立たないはずがない。3000年のなかには、天才も凡人も腕っ節の強い人も弱い人もいた。人類が生きた3000年の歴史をデータベースにし、類型化して検索できるようになれば、1人1人の生き方が、社会が変わるのではないかという気がするんです。

東大教授が指摘する歴史学者の盲点

【本郷】問題は、多くの歴史学者からそうした視点が抜け落ちてしまっていることです。学問が上で、一般社会が下――そんな感覚が、いまだに歴史学会を支配しているんです。

源頼朝はどのようにして御家人たちの信頼を勝ち取ったのか。そんな疑問に対し、様々な史料を読み解き、解釈していく。それが歴史学者の仕事です。この問いを現代に置き換えれば、経営者がいかにしてリーダーシップを発揮すべきか考える手がかりになるかもしれない。

撮影=遠藤素子

でも、私たちの業界では、それをやると格下に見られてしまう。ただ深井さんの登場で、歴史に関わる人たちの意識が変わるかもしれません。だって、深井さんは、歴史を活用して、実社会に貢献しているわけだから。

【深井】いまの歴史学会では、史料批判(注・史料の正当性、信頼性を検討する手法)が積極的に行われているのですか?