鎌倉幕府を開いた源頼朝は、味方だった大豪族の上総広常を殺している。歴史学者の濱田浩一郎さんは「NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、広常が大豪族であるがゆえに、頼朝の政権の脅威となっていることが殺害の要因として描かれていたが、それは史実とは異なる」という――。
佐藤浩市の迫真の演技は視聴者をザワつかせた
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の第15回「足固めの儀式」が放送された。その中において、源頼朝は豪族・上総広常に無実の罪を着せる。謀反を起こした見せしめとして、御家人がいる満座の席で、広常は頼朝の命を受けた梶原景時により討たれた。
広常演じる俳優の佐藤浩市さんの演技はすさまじかった。特に殺害されるシーンの目まぐるしく変わる表情(怒りの顔、哀願するかのような顔、おびえの顔、そして笑み)は、視聴者に鮮烈な印象を残したに違いない。
今回のドラマにおいて、広常は武骨者ながらもチャーミングなところがあり、主人公・北条義時と打ち解け、交流を深めている人物であった。それだけに、その死を悲しみ悼む視聴者が多かったようだ。
源頼朝は本当に残酷な男だったのか
その一方で、広常をはめて殺した頼朝に視聴者の怒りの視線が向けられて「頼朝嫌い」がTwitterのトレンド入りするほどであった。
元々、頼朝は、歴史上の人物のなかで、人気のある方ではない。どちらかと言えば、不人気と言って良いだろう。
その一番の理由は、異母弟の源義経を追い詰めて、最終的には死に至らしめたことにある。幕末維新の話になるが、薩摩の大久保利通が盟友の西郷隆盛と袂を分かち、西南戦争(1877年)で西郷を自刃に追い込んだことにより不人気であることと、どこか似ているように私には感じる。
「頼朝嫌い」「頼朝ひどい」の声が溢れる中で、「源頼朝は本当に残酷だったのか」を検証するのは、少々気が重いが、進めていこう。