平清盛の三男で、平家最後の棟梁として源氏と戦った平宗盛とは、どんな人物だったのか。歴史学者の濱田浩一郎さんは「愚将というイメージがあるが決してそんなことはない。衰退した平家の勢力を盛り返した武将であり、息子思いの良き父親でもあった。もっと評価されてもいい人物だ」という――。
無能なリーダーのイメージが強い平宗盛
平宗盛は、清盛の三男であり、清盛亡き後に平家一門を率いた武将だ。今年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、俳優の小泉孝太郎さんが演じている。
しかし、その評判は昔から今に至るまですこぶる悪い。宗盛というと愚鈍で無能なリーダーとのイメージで固まっている。
そういえば、1993年にNHKで放送されていた『人形歴史スペクタクル 平家物語』でも、宗盛はぽっちゃり体形の人形で造形され、その人物は優柔不断で頼りなく描かれていた。過去の大河ドラマでも、暗愚で狭量な武将として描かれがちである。
今回の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも、初登場(1月16日放送)シーンにもかかわらず、宗盛(小泉孝太郎)は、父・平清盛(松平健)に叱られていた。
静かな口調で、伊豆で流罪となっている源頼朝(大泉洋)が男児を作って騒動になっていることを清盛に報告したが「つまらぬことをわしの耳に入れるな」と一喝される。すぐに「ご無礼をいたしました」と頭をさげる場面が印象的であった。
平家が衰退するきっかけは宗盛だったのか
では、鎌倉時代に成立した軍記物語『平家物語』は宗盛をどのような人物として描き出しているのか。その物語における人物造形が、後世にも多大な影響を与えていると思われるので、まずはそこから見ていきたい。