これから電車に乗る人や乗り換え客の購入は期待できず、大事なのは家に帰る客が立ち寄ってくれることだ。改札が分散していない仙川駅の構造が売り上げにつながっていた。

来店客が一気に増えるのが夕方以降だ。特に6時くらいから忙しく、1時間に100杯を超えてくると、スタッフは3人必要になる。週末もこのペースは下がらない。ただし雨の日は気温が下がるからか、売り上げが落ち込む。荷物が多くなるのを嫌がるという要因もある。

筆者撮影
開店当初の仙川店。

バナナジュースは、焼きそばを扱ってわかったさまざまな反省から始まっている。

オペレーション面でいうと、焼きそばでは誰でも作れる再現性の追求が十分ではなかった。簡素化したとはいえ、焼きそばを一食作るのに相応の手間と時間がかかっていた。

バナナジュースは冷凍したバナナと牛乳を混ぜるだけというシンプルなオペレーションのため、アルバイトでも間違えようがない。一杯提供するのに20秒程度しかかからないので、客を待たせることもない。

値段設定では750円の焼きそばが高いと思わないが、より値段に敏感な層を取り込めていなかったのも事実だ。レギュラーサイズで340円、ラージサイズでも400円台のバナナジュースは習慣的に飲むドリンクとして受け入れられやすく、500~600円台が多い競合店と比べても競争力がある。

バナナジュース専門店が儲かるワケ

初期投資は少ないほどいい。バナナスタンド仙川店の開店費用は250万円程度と、焼きそばの4分の1だ。京王ストアのリニューアルオープンに合わせて、運営会社と折半になったのは大きい。

費用と時間をかけて顧客に認知させていくというオーソドックスな戦い方をした焼きそばに比べて、バナナジュースは時間も場所もかけないシンプルな戦い方に徹している。売れなければ、すぐに撤収できる身軽さがある。

また店舗の賃料は、売り上げの15%に設定した。売り上げ連動の形態をとることで収益を追求しつつ、最低保証額を固定賃料の相場より低く設定している。売り上げが好調なときは賃料が割高になるが、販売不振時に賃料で苦しむことはない。

ポイントカードは、バナナジュースを飲むことを習慣化させる重要な要素だ。一杯につきスタンプ1個で、5個ためるとガチャガチャを1回できるようにした。なかには50円引きやバナナジュース一杯無料といった特典が入っている。子どもの関心を引くので、親子で購入する客が少なくない。