デカルトからのアドバイス

決断できない。優柔不断で事なかれ主義に悩むあなた。

ころころと意見が変わり、決められないあなた。

『方法序説』にデカルトのこんな言葉がある。「優柔不断は悪よりも悪い」

シャルル・ぺパン(著)永田千奈(翻訳)『フランスの高校生が学んでいる10人の哲学者』(草思社)

デカルトは森で迷った男を例にあげている。森を出たければ一つの方向を選び、ひたすら歩くしかない。何度も方向を変えてぐるぐる同じところを歩いていたら、いつまでも森から出ることができず最悪の結果を招く。

あなたが決断できないのは、絶対を求め、完全な解決を求めるからだ。必ず結果に結びつく確実な方法が欲しいから、決められない。だが、私たちが暮らし、活動している世界は絶対の世界でも、永遠の真理の世界でもない。

アリストテレスがとっくの昔に言っているように(デカルトが八歳のときに、ラ・フレシュの神学校で最初に学んだのがアリストテレスの哲学だ)、形而上学的哲学と行動哲学は分けて考えなくてはいけない。形而上学的な視点で考えるなら、絶対や完全も存在しうる。

絶対に確実なものを求めていたら一生が終わる

だが、道徳や生活のなかで哲学が目指すのは、絶対や完全を求めることではなく、行動の指標をつくることである。だからこそ、デカルトは暫定的道徳を提唱した。絶対に確実なものを求めていたら、一生何もできずに終わってしまう。森のなかでさまよいつづけるだけだ。絶対に確実な光を待つうちに、飢えや寒さで死んでしまう。

だから、今を生きる私たちは不確実であっても行動することが大事なのである。簡単なことではない。だが、それが人間に与えられた条件なのだ。私たちは真理のなかに生きるわけではないし、神様でもないのだから。

デカルト
1596~1650
フランスの哲学者、数学者。方法的懐疑と、人間の理解の限界と神の存在を証明する暫定的道徳の祖。
関連記事
「相手を変えたければ、まず自分を変えよう」そんなよくある助言を、禅僧が真正面から否定するワケ
和田秀樹「コロナ禍でむしろ死者数が減ったのは、高齢者が病院に行かなくなったからである」
なぜ北欧は日本と違って「弱者にやさしい社会」なのか…日本人が誤解している「決定的な違い」
臨床心理士が警鐘「叱らずに、ほめましょう」という風潮に潜む大問題
「ワイン離れが止まらない」フランス人がワインの代わりに飲み始めたもの【2021上半期BEST5】