高齢化で日本の死者数は増え続けているが、新型コロナへの警戒感が強まった2020年だけは11年ぶりに死者数が減少した。医師の和田秀樹さんは「コロナに感染したくなくて、高齢者が病院に行くのを控えたから、死者数が減ったのだろう。高齢者は病院で処方される大量の薬を飲んだり、不要な手術を受けたりするせいで、むしろ寿命を縮めている」という――。

※本稿は、和田秀樹『80歳の壁』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

病院の待合室にいる高齢者
写真=iStock.com/SetsukoN
※写真はイメージです

健康診断を受けることは「長生き」には寄与しない

私は現役の医師ですが、現代の医療については、少し懐疑的なところがあります。理由は追々お話ししますが、一言で言うなら、医師たちの多くは「数字は見るが、患者は診ていない」と思うからです。その典型的な例が健康診断です。

日本語の健康診断シート
※写真はイメージです(写真=iStock.com/takasuu)

日本人の平均寿命が初めて50歳を超えたのは、1947(昭和22)年でした。その頃の「男女の平均寿命の差」は3歳ほどでしたが、いまではそれが6歳に広がっています。

これっておかしいと思いませんか? なぜ、女性の平均寿命は延びたのに、男性は延びなかったのでしょうか。

原因の一つに、日本人の「健康診断信仰」なるものがあると思っています。

定期の健康診断の多くは会社で実施されており、ひと昔前までは、健診を受ける割合は、男性が圧倒的に多いという状況でした。

健診が長生きに寄与するなら、男女の寿命は逆転してもよかったはずなのに、むしろ差が広がってしまった。つまり、健診が意味をなしていないということです。