アメリカのレストランチェーン大手「TGIフライデーズ」が、存続の危機を迎えている。60年前にニューヨークに1号店を構え、男女が集う大人の社交場として人気を集めた。しかし最近では客数が大幅に減少し、窮地に立たされていた。なぜアメリカの国民的レストランチェーンは、破産に追い込まれたのだろうか――。
2019年8月13日、ニューヨークのタイムズスクエア近くにあるTGIフライデーズ
写真=Sipa USA/時事通信フォト
2019年8月13日、ニューヨークのタイムズスクエア近くにあるTGIフライデーズ

ダラス本社を閉鎖、600店舗超から100店舗台への大幅衰退

昨年11月、TGIフライデーズは、日本の民事再生法にあたる米連邦破産法第11条の適用を申請し、ダラスの本社を閉鎖。破産手続きを進めることになった。なお日本国内ではワタミがFC展開しているが、破産は米直営店に限り、国内店舗には影響はない。

経営難の同社は昨年に入ってから、大規模な店舗整理を進めていた。CNNによると昨年1月以降、米国内で相次いで閉店。同年10月末にも50店舗を閉鎖し、店舗数は年初の約270店舗から163店舗にまで減少した。2023年9月には英国事業も破綻に追い込まれ、多数の店舗閉鎖により約1000人の従業員が職を失っている。

ウォールストリート・ジャーナル紙は、同チェーンが2008年頃には全米に600以上の店舗を展開していたと指摘。100店舗台となった現在の落日ぶりが際立つ。

今年1月に入ると、経営再建計画に進展が報じられた。ロイターは、9店舗の売却で手元資金を補うと報じている。ダラス・フォートワース空港内の5店舗などの売却により、計画通りに進めば目前の危機は回避できる形だ。

だが、米業界メディアのレストラン・ニュースによると、来店客数は大幅な減少傾向にある。昨年時点のデータでは前年比39%減と、極めて厳しい状況が続く。

アメリカを代表するレストランチェーンのひとつである同社の破綻は、米外食産業が直面する厳しい経営環境と業界全体の構造的な課題を浮き彫りにした。

「フライトアテンダントと出会いたい」創業者が1号店を開いた理由

アメリカでも飲食店の破綻は、とくにコロナ前後にはめずらしいことではなくなっている。だが、こうした時期的な要因を抜きにしても、同社の経営は時を経るごとに迷走が目立った。米ウォールストリート・ジャーナル紙は、TGIフライデーズが「壮絶な混乱」に見舞われてきたと指摘する。

はじまりは1965年、ニューヨークの街角だった。創業者のアラン・スティルマン氏は、最初の1店舗をこのアッパーイーストサイドの地に開業。ニューヨークに集まるフライトアテンダントとの出会いの場を設けたいというのが、個人的な欲求だったという。