「まずは黒字化」を求める一部の投資家を説得
事業への勝算が見えたのは、自身の経験も大きく後押しした。仕事柄スマホを操作する時間が多く、毎日のようにバッテリー不足に悩んでいた秋山は直感的にビジネスの伸びしろを感じた。不便を商売にするのはビジネスの鉄則だ。香港でモバイルバッテリーを展開する会社を買収した時には、すでに日本展開が視野に入っていた。
「当時、日本にこのビジネスはありませんでした。勝算はありましたよ」
同時に大きなチャレンジも必要だった。シェアリングのメリットは利便性。そのためには点ではなく、広い面を押さえる必要がある。一斉に大きな規模まで展開しないと結果が出ない。
「スピーディーに設置を増やしていくことが大事なのに、一部の投資家は『まずは黒字化』と言う。沢山意見もぶつかりました(笑)」
シェアリングの肝は返せる安心感。つまり一定量を投下しないと、絶対に結果がついてこない。設置のスピードをあげるために何度も資金調達を行ったが、そのたびに投資家を説得してきた。
秋山の言葉通り、インフォリッチが達成した全国への普及のスピードは驚異的だった。キーとなったのは、秋山のバックボーンでもあるヒップホップの縁だった。
ヒップホップの仲間たちと一気に全国へ
「20代の頃日本中をライブでまわったときに知り合った仲間の多くが、起業してなにかしらの事業を手がけていたんです。そんな彼らと代理店パートナーシップを握って一気に動きました。ストリート出身の彼らはフットワークが軽いんです」
インフォリッチは全国にある200の代理店とつながり、一気に全国に営業攻勢が始まった。
すぐに設置を許諾してくれたのが渋谷109と向かいにあるツタヤ。2カ所で若者がバッテリーを借りて返却する様子はビジネス番組でも特集され、シェアリングの利便性訴求に一役買った。抜群の知名度を誇る109とツタヤはいいフラッグシップになり、地方の設置台数は急速に伸びた。
「営業に行くとどれだけの量が設置されているか聞かれます。いいアカウントにアプローチが成功しても、量がないとどうにもなりません。いいアカウントと量は両輪。どちらもないとシェアリングは成立しないんです」