ファッション業界がビジネスモデルの変化に苦しんでいる。消費者の「トレンド離れ」が進み、思うような利益を上げられなくなっている。ジャーナリストの川島蓉子さんは「ファッション業界は『トレンド』を武器に、商品を大量生産して利益を得てきたが、いま大きな変化を迫られている。もう半年のサイクルだけに縛られるべきではないだろう」という――。

トレンドを軸に服作りから流通まで回っている

ファッションの世界では、「22年春のトレンドカラーは○○」、「流行のビッグシルエットに注目!」といった文言をよく耳にする。が、トレンドや流行は、いったいどこから来て、何のために存在するのだろうか。

実はこれ、ファッション産業が持っている独自の仕組みであり、“流行=トレンド”を基に、モノ作りから流通までが回っているのだ。

その始まりは、店頭に服が並ぶ約1年半前までさかのぼる。欧米にはトレンド会社というものがあり、色、質感、シルエットなど、流行にまつわる「トレンド情報」が発信される。それに基づいて、糸や布のメーカーは製品を作り、約1年前に展示会に出す。

デザイナーはその布を使い、約半年前にコレクションショー(パリ、ミラノ、ニューヨーク、ロンドン、東京コレクションはこれを指す)として発表。その様子がファッション雑誌や新聞などのメディアを通して伝えられる。そのような長い過程を経て、春夏・秋冬シーズンの半年サイクルで新しい服が店頭に登場し、消費者の目に触れるようになるのだ。

価値が下がりつつある「流行の最先端」

つまりファッションは、「今シーズンのトレンドは○○」という流行を生み出して消費者の消費意欲を喚起してきた産業であり、トレンドが川上から川下へ伝わっていく構図が、それを支えてきた。シーズンの終わりに、在庫を次シーズンに持ち込まないため、半年ごとにセールで価格を大幅に下げて売り切ってきた。

日本では、主に戦後から高度経済成長期にかけ、欧米のやり方を模倣するかたちで、この一連のシステムが機能してきたが、「流行の最先端であること」や「トレンドに乗っかっていること」が以前に比べて価値を持たなくなり、うまく回らなくなってきた。

それでは、このまま流行は消えていくのか。

人類はクレオパトラの時代から「流行」と密接な関わりを持ってきた。その意味で、流行という存在そのものがなくなることはないだろう。しかし、そのあり方が、「業界一斉に半年でワンサイクル」という構図ではなくなり、ブランドによってさまざまな提案の仕方が出てくるのではないか。

こうした私の仮説を、ファッション&ビューティメディア『WWDJAPAN』編集長の村上要さんにぶつけてみた。

村上要(むらかみ・かなめ)さん
撮影=西田香織
村上要(むらかみ・かなめ)さん。1977年生まれ。東北大学教育学部卒業。2017年4月に「WWDJAPAN.com」編集長に就任し、21年4月から現職