ファッションを伝えるメディアの存在意義
個人個人が好きな格好をすることを尊重し、多様性を認め合う価値観が広まる中、「かつてのように一大ムーブメントになるような流行は起きづらい」が、流行という存在はなくなるわけではない。特定のコミュニティでのみ通用する、局地的なトレンドが無数に、同時多発的に存在するようになる。半年というサイクルにも縛られることなく、さまざまな流行のかたちが共存していく、というのだ。
「今までは、服というかたちになった結果を主に伝えてきたのですが、何をどういう風に考え、どんな思いを持って作ったのかという過程をもっと伝えなければと感じています。それぞれにストーリーがあり、ユーザーはそこに価値を見出す時代だと思うのです」
送り手である業界と、受け手である消費者の双方に伝えていくのが、これから果たすべき役割だと言う。
そうした村上さんの姿勢がよく表れているのが、WWDJAPANが週に2回、発信している「エディターズレター」だ。
そこには、「ここが悪い」と叩くのではなく、「もっとこうすれば」、「ここがおもしろい」と、前に向かう視点が盛り込まれている。そこには「業界がより良くなってほしい」という思いが込められているのだ。「ファッションが好き」「ファッションはおもしろい」が、試行錯誤を続ける業界の未来を拓いていくのだろう。