黒人たちはやるせない思いで見つめている
ところが、同じコミュニティの声はやはり厳しい。50代の黒人男性デイビッドは「女性はもちろん脅かされるべきではない。でもウィルはジェイダを何から守ったの? ジョークから? 彼は決して白馬の騎士ではないよ」。前出のナターシャも「黒人女性が欲しいのは、守られることではなくリスペクトでしょう」と指摘する。
アフリカン・アメリカンの情報発信をしているBETは「黒人女性を守るのに必要なのは暴力ではない。彼女たちのために声を上げることだ」と言い切った。
ナターシャはこうも言う。「今回の出来事はウィルやジェイダの人格から、黒人社会、アカデミー賞の対応まで、あまりにも多くの問題をはらんでいて何とも言いがたい。でもだからと言って、これでウィルが積み上げてきたものがすべて失われるべきではない。他にももっと酷いことをした俳優もいるのだから」
ウィルはアカデミーを退会すると表明しているが、「退会したくらいではとても責任をとったとは言えない」という声も大きく、騒動はしばらく続きそうだ。しかし、黒人セレブのひと悶着よりも、一向に減らないヘイトクライムや警察暴力など報道すべき事件はたくさんあるだろうと、ブラック・コミュニティの人々はやるせない思いで見つめている。
最後に、黒人女性イモヤはこう語ってくれた。「私の兄は警察暴力にあい大怪我を負ったのに、容疑者の警官は3年もたってようやく逮捕されたばかり。こうした事件に対しても、メディアが同じくらいのエネルギーを持って報道することを願っています」