※本稿は、岡田豊『自考』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
「人の数だけ価値観がある」を大切にするアメリカ
アメリカが日本より優れていると言うつもりはありません。アメリカやアメリカ人のダメな部分、負の部分もたくさんあります。
日米のどっちが秀でていて、どっちが劣っていると単純に比べることは合理的ではありません。他国には、私たち日本が参考にしたい材料があります。なかなか気付かないことです。
アメリカ人はよく笑います。街中でも、道ですれ違う人も、電車の中でも、会話を楽しんでいます。どこか、余裕があるように見えました。「アメリカ人は10人いれば、10通りのスタンダード(基準)がある」。アメリカに住む知人はこう言います。個人主義が徹底しているというアメリカでは、すべての個人に存在を認めようという空気が強いのだと言います。
だから、空気が軽いのでしょうか。多くの人が楽しんでいるように見えるのでしょうか。アメリカ人は自分をとても大切にしているように見えました。
自分を大切にしたいから、他人の個も大切にしようとするのでしょう。だから、あいさつをし、会話をし、笑顔でいられるのでしょう。それらは、自分を主張し、相手を受け入れるための技術、テクニックなのかもしれません。
人を評価する尺度やモノサシ、価値観などは、本来、人の数だけあっていいと思います。100人いるのに、3つの尺度しかなかったら、この3つの中に100人を無理やり押し込めなければいけない社会は息苦しいです。
平均に押し込む日本からは「天才」は生まれにくい
日本からニューヨークに移り、アーティストとして10年以上活動する知人のKさんは「日本社会は人を平均値に押し込めようとするから天才が生まれにくい」と言います。アメリカ社会は激しい競争社会なので、「最高」と「最低」が生み出されやすく、結果的に「平均層」が日本ほど多くないとKさんは指摘します
世界有数のITやSNSなどの会社。世界有数の音楽、芸術、映画。アメリカ社会は「世界有数」を数多く輩出しています。一方で、強烈な格差を生み、ホームレスや薬物依存者の増加といった問題も深刻化しています。個人主義のアメリカの方が必ずしも良い社会だとは思いません。アメリカの方が日本より居心地が良いと必ずしも思いません。ただ、日本は、アメリカと比べると、個人の存在が軽視されています。